微笑みの弊害 ページ16
「うんわ、マジだ。」
開いたドアに、こんばんはーと言うと、呆然と立ちっぱなしの翔太くんもとい渡辺さん。
｢マジって？…こっちはいつも大まじですよ。｣
｢A、なんでこんばんは程度で微笑んでんの？！｣
いつも挨拶は微笑むようにしてたつもりだったんですけど。
翔太くんにすらできてなかったってことよね…。地味に傷つく。私って私が思う以上に無愛想なのかも。
渡辺さんも渡辺さんで、謎に焦って、珍しく院内でAなんて呼んじゃってる。
｢さっき受付の人にさ、先生怖いんです、おかしいんです！って言われたから何事？ってビビってたら、コレかよ…怖ぇよ。｣
｢あぁ…院内では最近私が怖いで持ち切りなんですよ。失礼な。｣
｢そうゆう感じは変わんないのね。…おっけ、慣れてきたわ。｣
翔太くんは別に、仲がいいんだから私が笑うとこも知ってるでしょ！とツッコミそうになって辞める。
この話題は深掘りしてもうまく自分でも説明つかないから。
そのままこれ以上この話題が続くことも特になくて。
いつもみたいに緩く、必要最低限の会話をしながら翔太くんの施術が終わる。いつも翔太くんは最後の枠を予約してるから、今日はこれで終業。
彼は予告通りなにやら最近忙しそうにしていて、今日はご飯の約束もなく直帰。
いつも通りコンビニに寄って、家まであと数分ってところで。
｢…あの、｣
後ろから強く手をつかまれ、咄嗟に振り返った。
｢先生、俺、｣
この人はたしか…今日診察した…、
…名前、思い出せないや。
医者失格かも？なんて、ヤバそうな状況なのにやたら冷静な自分にちょっとだけ嫌気がさした。
｢連絡先交換しません？今度よければ飲みにでも、｣
｢っ、離してください。｣
｢え、そんな怖い者じゃないんで！今日楽しく話したじゃないですか、｣
楽しく？
｢先生、俺と話す時、嬉しそうに笑ってたし、｣
嬉しそう？
｢何言ってるんですか、…やめてください。｣
抵抗すればするほど、ギリリと爪が腕に食い込む。
微笑みの弊害…？なんて、いよいよどうにかしないといけない状況なのに、どこか他人事でいると。
｢女の子には優しくしないと、ダメでしょ？｣
と、ふわっとしたこれまた悠長な声とともに、どこからか伸びてきた白い手が、私の腕を掴む手を解いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1511人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あやめ(プロフ) - るなさん» コメントありがとうございます！……見切り発車した秘密のお友達、ご期待に応えられるか分かりませんがこの先も見守って頂ければと思います。笑 (1月20日 4時) (
レス) id: 76de914c7b (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - お話大好きです！渡辺くんとの関係を知ったふっかさんのリアクションが気になります笑笑 これからも楽しみにしてます！ (1月19日 20時) (レス) @page42 id: 35fcb02ad2 (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - まぷさん» まぷさん、ありがとうございます ; ; 全部…嬉しいです。こうやってコメント下さって私が認識してしまったのでもう勝手とは言わせませんよ( ⩌⤚⩌)笑 これからもどうぞよろしくお願いします…！ (1月10日 19時) (レス) @page18 id: 2dd2e7231f (このIDを非表示/違反報告)
まぷ(プロフ) - あやめさんのお話全部読ませていただいてます！勝手にめちゃくちゃファンです、、♡更新楽しみにしております！ (1月9日 22時) (レス) id: a95612f43b (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - 美紀さん» 前作に引き続き、コメントありがとうございます ; ; 糧になったので新作、始めちゃいました。笑 これからも楽しみにして頂けるよう推敲に励みます！ (1月6日 19時) (レス) id: 5b6428e648 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あやめ
| 作成日時：2024年1月6日 7時
