過去101 ページ5
返事は翌日に来ていた。
"確認して、慎重に"
早朝、そのメッセージを確認するや否や私は誰もいない書斎に忍び込み盗聴器を回収した。
そして、日課の仕事を終え、買い物に行くと協会を出て、街のインターネットカフェで、そのデータを確認した。
その音声データを聞いた時の記憶は曖昧で、上手く表現できない。
"今日はずいぶん声をあげるなA"
その声は間違いなく父のもので。
呻き声のような嬌声は間違いなく私のもので。
皮膚のぶつかる音。
粘膜の擦れる音。
その部屋でなにが行われているかなんて答えは１つだった。
"絶っ対……殺す"
"はは、そういってもう何年だ？
君はいまだに私の皮膚に爪を立てるので精一杯じゃないか"
愉快げな声は甘くねっとりと纏わりつくようなもので、それは初めて聞く音で、いやその場に私がいるのだから初めてなはずはなく、でもそれを私は知らなくて……
自分の前に突如として広がった真実が真実だと信じられなかった。
何も考えられなかったが、鼓膜を震わせるこの音声が、その向こうの景色が汚らわしいものだと感じたので私は音声を途中で切り、データをそのまま消した。
肺の中の空気を全て吐き出し、そのままどれ程うずくまっていただろうか。
足に力が入らなく、吐き気がひどかったが、この状態で家に帰らないのは奴に不信感を抱かすきっかけとなりかねないと無理矢理立ち上がった。
"奴"
自分自身が無意識に発した言葉を喉の奥で繰り返した。
そう、"奴"だ。
もはやアレを父とは呼べない。
私が今まで信じていたものは嘘だったのだ。
父も、家も、家族、愛情も、私自身も。
全部嘘だった。偽物だったんだ。
その事を理解すると胸の中が空洞で、苦しかった。
だが腹の奥底に、煮えたぎる炎はこの時既に存在していた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 57人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あやこ(プロフ) - らぶらさん» らぶらさん、コメントありがとうございます。更新速度を上げていく予定ですので、是非最後までよろしくお願いします。 (4月22日 23時) (
レス) @page5 id: 7bf5456e4c (このIDを非表示/違反報告)
らぶら - 更新楽しみに待ってます！！ (3月30日 0時) (レス) @page3 id: 5fb95732a5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あやこ | 作成日時：2024年3月26日 0時
