妖9人 ページ10
「……はぁ……。」
夕御飯を食べていると、琥珀が深い溜め息をついた。
俺は煮物に箸を伸ばす。
湯気をたてているカボチャは、箸で摘まむとﾎﾛｯと崩れた。
口に運ぶと、甘い味が口一杯に広がる。
認めたくないけど、
「……どうした? 」
俺が声をかけないといつまでもそうしていそうだったので仕方なく声をかけた。
琥珀はﾊﾟｧｯと顔を輝かせ、此方に向き直る。
「あんさ、来週の土曜暇? 」
犬のような顔でそう聞く。
来週の土曜?
用事あったっけな? と思いながら手帳を開く。
特に何も書かれていなかった。
「無い、けど。」
「本当!? 」
何か嫌な予感するな、と思いつつも返事をする。
琥珀はそう叫んで、俺をｼﾞｯと見つめた。
「その日、さ。町の妖が集まるんだよね。」
「……で? 」
「祭り、みたいな事すんだと。……で、皆番連れていくらしいから……お前も来る? 」
一応確認、と言った感じだが……。
その顔はご褒美を待つ犬のよう。
後ろに尻尾も見える。
「……どうしよっ、かな? 」
ﾁﾗ,と琥珀を見つつそう言うとあからさまにｼｭﾝとする。
「……嘘。行ってあげても良いよ? 」
なんて微笑めば「ホントか!? 」と嬉しそうな琥珀。
「ん。」
その嬉しそうな顔に、何でか此方まで嬉しくなって。
俺はそれを隠すように頷いた。
けど、恐らく顔は真っ赤だろう。
「……ｯ、ご馳走さま。」
誤魔化すように、箸をおいて部屋に戻った。
後ろでは琥珀が「どうした? 」なんて叫ぶが知ったこっちゃない。
「……ぅぅ……。」
竜雅先生は忘れて、と言っていたが……。
あんなの忘れられる訳が無い!
「……琥珀の顔見たら……。」
その時の光景が嫌でも思い浮かんでしまう。
俺は枕に顔を押し付け、唸った。
どれくらいそうしていたのか。
気付くと眠っていたようで。
「……ｯ、ぅﾝ……。」
時計を見ると午前2時。
頭の下に何かがある感覚がして、俺は目を覚ました。
……腕枕?
「……ﾝ、ﾑﾆｬ……。」
ｷﾞｭｳ,ともう1つの腕で腰を抱かれる。
その感覚が嫌ではなくて。
寧ろ心地好くて。
俺は直ぐに眠りに着いた。
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作者名：白琥珀 | 作成日時：2019年2月16日 9時
