ハンカチーフ ページ14
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あれからというもの、事はスムーズに進んだ。
桃色の店員と、高身長のいかにも大人の男性というような雰囲気を持った店員が手際よく処理をしてくれたからだ。
「あの…。有難うございました。私の不注意で、貴方様にも迷惑を…。」
騒動で倒れた机や椅子を直していると、先程まで男に絡まれていた女性が、僕のもとまで歩いてやってきた。近くで見ると、どうやら思っていたよりも若いらしい。17〜18歳といったところか?小さな肩を震わせながら、まだ怯えた顔で目を伏せそういった。人の悲壮感に満ちた表情ほど、僕の心をキュッと締め付けるものはない。
「大丈夫です。迷惑だと思ってませんから。それでもよく耐えられましたね…。天晴(あっぱれ)でした。」
「え…ふふ。そう、ですか?」
僕が、彼女の肩をポンポンと数回叩きながらそういうと、女性は少し不思議そうな顔をしてしばらくするとパーッと笑顔になった。
「ん?君の右腕…。」
「あ、」
突如、女性の腕が長い着物の袖から見え、そこが真っ赤に染まっているのが見えた。そうか、あの皿の破片で怪我を…。僕は、ハンカチを取り出すと躊躇することなく、女性の腕に巻き付けた。
「え、ええ!?これってあの…。」
「すみません。止血をと思って…。」
痛かったですか?
僕がそう問えば彼女は首が千切れるのでは無いかというほどに首を横に振った。
「ただ、このハンカチ…有名な店の、とても高価な物なんじゃ…。」
気づかなかったが、周りの客もガヤガヤとどよめいていた。原因はきっとこのハンカチだろう。
「あー。いえ、大丈夫ですよ。まずは貴方の傷を少しでも良くすることが大切なので。それにもうこれは…僕には必要ない。」
そうだ、こんなもの必要ない。
これは里にいたとき男から貰ったものだ。鎌鼬の長の娘だからなのか、どうやら僕は知らないうちに多くの男から貢がれていたようだ。これもその一つに過ぎない。高価なもので釣られるほど、安い女に成り下がったりはしない。
「でも、本当にこんな…。」
「貴方は女性なんですから。ご自分の体は大切にしてください。」
「…あり、がとうございます!」
「怖い思いをしたのに、よく耐えましたね。僕、度胸がある女性って素敵だと思います。」
すると女性は、こころなしか少し頬を染め、嬉しそうに表情を綻ばせた。
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妖氷 - 面白いです!これからも頑張ってくださいね? (2019年12月3日 18時) (レス) id: b589f6a6a6 (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - りんさん» 返信が遅くなってしまって申し訳ありませんでした。あや恋を深めたいと思ったので書きました!面白いと思っていただけて嬉しい限りです。嗚呼、執筆していてよかったー!応援有難うございます!更新する時間を努力して確保しようと思います!よろしくお願いします。 (2018年12月9日 2時) (レス) id: 6a49c456d5 (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - あまの雪さん» 返信が遅くなってしまいすみません。あや恋小説にチャレンジしよう!と思ったが吉日で書いたのでどうかなとドキドキしていたので、そう言ってもらえるととても嬉しいです!更新楽しみにしていてください! (2018年12月9日 1時) (レス) id: 6a49c456d5 (このIDを非表示/違反報告)
りん - あや恋の小説家はじめて見つけられてワクワクしながら読んだらとても面白くて夢中で読みました!応援してます! (2018年12月5日 23時) (レス) id: ac0881515d (このIDを非表示/違反報告)
あまの雪 - あや恋の小説今まで無かったので嬉しいです!面白い。低評価する意味がよく分かりませんね〜頑張ってください! (2018年12月2日 19時) (レス) id: 8c1fa0b23e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふてんにぶおんぷ | 作成日時:2018年11月21日 21時