ねぇ、愛して【stpr】 (ページ25)

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褒められて悪い気はしないが、慣れないもので反応に困ってしまう。
お世辞だったりするのだろうか。

さとみ「…じゃあ、行きましょうか」

私たちは、横に並んでゆっくり歩き出した。
特に行くあては無いようで、話しながらたまに気になったお店に入ったりしていた。

誰もいない公園のベンチに腰を下ろすと、さとみさんはこちらを見てはにかんだ。

さとみ「ほんとにAさんと居るの、楽しいです」

『…私も、です』

若干俯きがちに言う。
デートを最後にしたのはいつだったか。
あのときはまだ良かった。元夫も優しくて、全てがキラキラして見えた。

さとみ「よかったぁ」

この優しい笑みは本物だろうか？
すべての仕草、言動、そしてあの日の出会いは本物なんだろうか？

さとみ「あの、ほんとに。急だってことはわかってます。Aさん。…俺と結婚してもらえませんか？」

『…え、っと。』

きっとこの人なら大丈夫。
子供のことも、しっかり考えてくれる。
今回は間違えない。

『…はい。よろしくお願いします。』

・

スピード婚から2週間後。
さとみさんは私に対して優しいままだった。
暴力、暴言もない。

さとみ「Aさん、いってらっしゃい」

『行ってきます！』

再婚するとなって母親が自分たちも一緒に住むことを強制してきたため、今は私とさとみさん。
子供二人と母の5人で暮らしている。
暮らしは安定していた。

『…幸せ者だなぁ…』

一人でいても、幸せを感じる。
やっぱり運命だったんだ。

ふと、家に忘れ物をしてきた事に気がついた。
時間には余裕があったため、家に戻ることにした。

家の近くまで来ると、何やら騒がしい。
子供の泣く声と、怒鳴り声。悲鳴まで…？

まさかなにか…？

駆け足で家に入る。音は家からしていた。
リビングに入ると、血を流した母が居た。

『え？…え、お、お母さんっ？大丈夫？』

「…だめ…寝室、行かなきゃ…」

状況を把握しようと辺りを見回す。
寝室のドアが少しだけ開いていた。

恐る恐る扉を開けると、さとみさんの後ろ姿が見えた。

『ご、強盗ですかっ？さとみさん、お怪我は…？』

さとみ「…あぁ。Aさん。帰ってきたんですね」

こちらを見ずに答える。

『なにをして…え？』

ベッドの上には、私の子供がいた。
…いや、子供だったものというべきか。
それはもう原型をとどめておらず、肉塊となっていた。

『え、あれ？え？私の…赤ちゃん？』