【story3.】 ページ3
◇
授業中。
一番前の席にいるるぅとくんに視線を向ける。
ふわふわしている柔らかい髪の毛、ぱっちりした二重で垂れ目、背筋をぴんと伸ばして黒板を見つめている。
可愛らしい見た目に反して背は高い。
あの声も、性格も、話し方も。
なんにも変わっていない。
『…やっぱそうじゃん、』
思わず口から溢れた言葉に、隣の席の男子が怪訝そうな顔を向けてくる。
…この子、なんて名前だったっけ。
思い出そうにも、この男子の名前は一向に思い出せそうにない。まぁ、別にいいか。
??「ね。なんかあった?」
『……え、私?』
??「そうだけど」
声をかけられて反射的に視線を返す。先ほどからこちらを見ていた男子が話しかけてきたようだ。
私の反応が可笑しかったのか、小さく笑っている。
こうやって人と会話をするのは久し振りだな、と私は思った。もちろん、委員会の人だとか、担任だとか、部活勧誘の先輩たちだとか。そういう人と話すこと自体はあった。
ただ、私自身に興味を持ち、私自身に話しかけてくれる人は誰一人としていない。
そういう人たちとの会話は事務的で、ひどく冷たいものだった。
でもこの人は…。
??「Aだっけ?名前」
『…うん、そう。あの…』
??「ん?あ、俺?
『…奏多くん…、ご、ごめん、ね』
うまく言葉が出てこない。頭の中には言いたいことがあるのに、うまく発音出来ない。
こんな事になるなら、毎日ぬいぐるみにでも話しかけていれば良かった。
奏多「気にすんなって。俺が勝手に覚えてるだけだし」
『…そ、っか。ありがとう…、?』
「おい、二宮、早瀬。静かにしろー」
奏多「あっ、やべ。すみませんっ!」
話すのに夢中になっていたら、先生から注意を受けてしまった。周囲の視線が一斉に私たちに集まる。
これまでの私だったら、ここで教室から飛び出していただろう。だが、今の私は違う。
無意識のうちに奏多くんと目を合わせて、微笑んでいた。
誰にもバレないようにして。
二人だけの秘密だというように。
些細な出来事じゃないかと、皆は言うだろう。
だけどそれで良い。私にとっては十分すぎた。
きっと、寂しかったんだと思う。
きっと。
きっと─────。
・
誰かがぽつりと呟いた。
「…あれって…」
「…A…?」
◇
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ココナッツ(プロフ) - 続き楽しみ‥!頑張ってください(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ (2023年4月24日 23時) (レス) @page14 id: ef3e90460f (このIDを非表示/違反報告)
ぽむさま。(プロフ) - バイさん» コメントありがとうございます!その時の気分で書いているので絶対とは言い切れませんが、結果的には仲直りすると思います!仲直りしないにしても、地獄に堕ちる…みたいな事はないです! (2023年4月9日 15時) (レス) id: e3d1979fd3 (このIDを非表示/違反報告)
バイ - 仲直りするハッピーエンドですか?すとぷりが地獄に落ちるbad endですか? (2023年4月9日 15時) (レス) id: 8a4c8aac9a (このIDを非表示/違反報告)
ぽむさま。(プロフ) - うさぎんさん» わ!ありがとうございます😭面白いって言っていただけるのめっちゃ嬉しいです!!次も面白いって思って頂けるように頑張らせていただきます!🙏✨ (2023年4月6日 9時) (レス) id: e3d1979fd3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽむさま。(プロフ) - 笹音さん» ありがとうございます!✨更新は遅めですが楽しみに待っていただけたらありがたいです!🥰 (2023年4月6日 9時) (レス) id: e3d1979fd3 (このIDを非表示/違反報告)
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