検索窓
今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:10,766 hit

【story3.】 ページ3




授業中。
一番前の席にいるるぅとくんに視線を向ける。

ふわふわしている柔らかい髪の毛、ぱっちりした二重で垂れ目、背筋をぴんと伸ばして黒板を見つめている。
可愛らしい見た目に反して背は高い。

あの声も、性格も、話し方も。
なんにも変わっていない。


『…やっぱそうじゃん、』


思わず口から溢れた言葉に、隣の席の男子が怪訝そうな顔を向けてくる。


…この子、なんて名前だったっけ。


思い出そうにも、この男子の名前は一向に思い出せそうにない。まぁ、別にいいか。



??「ね。なんかあった?」

『……え、私?』

??「そうだけど」


声をかけられて反射的に視線を返す。先ほどからこちらを見ていた男子が話しかけてきたようだ。
私の反応が可笑しかったのか、小さく笑っている。


こうやって人と会話をするのは久し振りだな、と私は思った。もちろん、委員会の人だとか、担任だとか、部活勧誘の先輩たちだとか。そういう人と話すこと自体はあった。

ただ、私自身に興味を持ち、私自身に話しかけてくれる人は誰一人としていない。
そういう人たちとの会話は事務的で、ひどく冷たいものだった。


でもこの人は…。


??「Aだっけ?名前」

『…うん、そう。あの…』

??「ん?あ、俺?奏多(そうた)だよ。二宮奏多」

『…奏多くん…、ご、ごめん、ね』


うまく言葉が出てこない。頭の中には言いたいことがあるのに、うまく発音出来ない。
こんな事になるなら、毎日ぬいぐるみにでも話しかけていれば良かった。


奏多「気にすんなって。俺が勝手に覚えてるだけだし」

『…そ、っか。ありがとう…、?』


「おい、二宮、早瀬。静かにしろー」


奏多「あっ、やべ。すみませんっ!」


話すのに夢中になっていたら、先生から注意を受けてしまった。周囲の視線が一斉に私たちに集まる。
これまでの私だったら、ここで教室から飛び出していただろう。だが、今の私は違う。


無意識のうちに奏多くんと目を合わせて、微笑んでいた。
誰にもバレないようにして。


二人だけの秘密だというように。


些細な出来事じゃないかと、皆は言うだろう。
だけどそれで良い。私にとっては十分すぎた。

きっと、寂しかったんだと思う。


きっと。



きっと─────。







誰かがぽつりと呟いた。




「…あれって…」












「…A…?」



【story4.】→←【story2.】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (61 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
103人がお気に入り
設定タグ:stpr , stxxx , すとぷり
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ココナッツ(プロフ) - 続き楽しみ‥!頑張ってください(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ (2023年4月24日 23時) (レス) @page14 id: ef3e90460f (このIDを非表示/違反報告)
ぽむさま。(プロフ) - バイさん» コメントありがとうございます!その時の気分で書いているので絶対とは言い切れませんが、結果的には仲直りすると思います!仲直りしないにしても、地獄に堕ちる…みたいな事はないです! (2023年4月9日 15時) (レス) id: e3d1979fd3 (このIDを非表示/違反報告)
バイ - 仲直りするハッピーエンドですか?すとぷりが地獄に落ちるbad endですか? (2023年4月9日 15時) (レス) id: 8a4c8aac9a (このIDを非表示/違反報告)
ぽむさま。(プロフ) - うさぎんさん» わ!ありがとうございます😭面白いって言っていただけるのめっちゃ嬉しいです!!次も面白いって思って頂けるように頑張らせていただきます!🙏✨ (2023年4月6日 9時) (レス) id: e3d1979fd3 (このIDを非表示/違反報告)
ぽむさま。(プロフ) - 笹音さん» ありがとうございます!✨更新は遅めですが楽しみに待っていただけたらありがたいです!🥰 (2023年4月6日 9時) (レス) id: e3d1979fd3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぴゃぬさま | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2023年1月8日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。