# beautiful object

いざ、ブラーノへ ページ17

『え!?イタリア!?』









幕は突然切って落とされた








遡ること十数時間前







亜嵐「Aー。玲於ー。ちょっとイタリア行ってきてー」





いや待って




この人おかしいのか




ちょっとコンビニ行ってきて的なニュアンスで言えることじゃないでしょ








『いきなりすぎません？』





亜嵐「え、そーかな。いってらっしゃーい」









そんな軽いノリでここブラーノまで来てしまった







レース編みが盛んなこの街は独特な家々と色彩が特徴









『佐野さん。素敵な場所ですね』








玲於に「Aほど素敵なものなんてこの世に存在しないよ」





『やめて下さいよ』





玲於「生憎その様な類いの冗談は好きじゃない」









どうせ冗談でしょと思って佐野さんを見るといつになく真剣な顔だから恥ずかしくなって顔を背けてしまった




心を見られてるようで擽ったい








『あっ』








川沿いに小さな果樹店があって小柄なおばあさんが楽しそうにでも儚そうに川を流れてく小船を眺めていた



何もかもが小さく儚いこの街並みに感動して







『佐野さんっ!見て!凄く素敵』








思わず勢いよく振り返ったらあたしに向けられるレンズ








玲於「やっぱり完璧な被写体だよ、A」







あたしが撮って欲しかったのはあそこなのにって言おうとしたけど、佐野さんの純粋無垢な笑顔を見たら何も言えなかった






固まるあたしを覗き込む幼い顔も


あたしに問いかける声も


小さく香るフレグランスも





あたしにしてみれば全てが魅力的で強烈な刺激で



自分の中に湧き上がるこの新しい感情は何なのかが分からない









.









ただ言えるのは今見えてるのは佐野さんだけってことと



あたしの心臓が加速してること

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