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何も考えずに足が1歩前へと動き出す。
それと同時に、窓から見えていた（人1）の姿は
サッと身を隠すように見えなくなった。
奨「…っ…｣
1年前のあの日の夜みたいに。
大きな何かを目の前で失ったような
そんな喪失感に急に襲われた。
駆け出そうと、再び1歩足を踏み出した時
歌い終わった純喜に腕を掴まれて
やっと我に返った。
何かを悟ったような目で静かに首を横に振る純喜。
ラストのサビも
なんならサビから終わりまでの俺のパートも
気づかぬ間に純喜が1人で歌ってくれていた。
「ミニコンサートは以上になります
ありがとうございました！｣
純喜に腕を掴まれたまま
一緒に一礼してステージを降りる。
舞台裏へとはけた瞬間抑えていた気持ちが溢れた俺は
純喜の腕を振り払って駆け出した。
純「奨くん！！！！！｣
患者さんも、看護師さんも皆が異様な目で見てる。
歌い終えたばかりの息が上がった身体で階段を駆け上がった。
すれ違う人と何度もぶつかりそうになった。
その度に迷惑そうな顔をされた。
だけど、そのひとつひとつに謝ってる余裕なんてなかった。
後ろから追っかけてくる純喜の声に返事をする余裕すらも。
奨「（人1）っ！！！！｣
3階フロアに着いた瞬間に叫んだ。
そして同時に、少し離れた渡り廊下で外を眺める（人1）と目が合った。
『……！』
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作者名：しろごはん | 作成日時：2023年10月30日 21時
