君と見る桜をもう一度… (ページ28)

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奨side

頬に触れる（人1）の小さな手

思わず、2人して笑みがこぼれる。

あれから3日。

治療の疲れとストレスが相まって高熱が出た（人1）は、ICUに入って面会が許されなかった。

何を選べば正しいのか

俺はどうしたいのか

何を選べば（人1）のためになって

何をしてあげられるのか。

…（人1）はこの1年、どう生きてきたのか。

ずっとずっと…考え続けた。

時間が許す限り病院に通い続けて、（人1）が目覚めるのを待った。

だけど、下がらない熱に完全に疲弊しきった（人1）は目覚めない日が続く。

首に巻かれた溶けたアイスパック

吐息で曇った酸素マスク

そして、熱で赤らんだ頬

クタクタになって眠る（人1）を待ち続けるのはなかなかに堪えるものがあった。

ガラス越しの（人1）を見て、どうしようも無い恐怖と不安が押し寄せる。

何度も我を失ってしまいそうになる自分に

「死んでない、寝てるだけ。」

必死にそう言い聞かせて平静を保った。

そして、収録終わりの昨日の晩。

純「奨くん！（人1）が…！」

そう言って部屋に入ってきた純喜の声を聞いてぞっとして振り返った。

だけど純喜の目は、喜びに満ちていた。

そして今、俺の頬に触れて

仕方なさそうに眉を下げて笑う（人1）

俺は勢いをつけて立ち上がって
また、ベッドの柵に手をついて（人1）と向き合った。

目の前の彼女を守りたい。
その思いは今も1年前も変わっては無いはずなのに……聞いて、全てを知ってしまうのが怖くなってくる。

上を向いて大きく息を吸い込んだ。

大好きだから
大切だから
守りたいから。

全てを受け止める覚悟で
何があってももう二度と離さない。
二度と…（人1）を1人にさせない。

その想いで（人1）の手に触れた。

奨「（人1）…教えて欲しい。」

「この1年…（人1）に何があって

（人1）がどう生きてきたのか」

「俺は知りたい…全部を…受け止める…。」

「全部を受け止めて…（人1）ともう一度…」

そう言いかけた時、握った（人1）の手がすっと離れた。

その手はゆっくりと口元に向かって、酸素マスクが外す。

その酸素マスクを付けようと手を伸ばすと、ゆっくりと横に首を振られた。