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奨「なんでっ…なんで…」
倍になって溢れてきた涙は止まらない。
全部…全部(人1)そのものじゃないか
繊細ですぐ泣いちゃうのも
優しすぎて自分より他人を優先しちゃう
それで自分の気持ちが言えなくて息詰まっちゃうのも
全部が全部…(人1)だ。
しびれを切らした俺はついに目の前のドアを開けた。
純「奨くん……!」
泣きはらした目の純喜
そして、顔色のない(人1)と目が合う。
奨「(人1)…!俺…」
ベッドへと近づく俺の事など
まるで見えていないかのように、
(人1)はベッドから降りて歩き始めた。
純「(人1)、走ったらあかん」
『分かってる…』
スタスタと歩いて部屋を出ていこうとする(人1)に、純喜はボソッと呟くような声で釘を刺す。
そして(人1)も、返事をした。
そのまま病室の外に出てしまう。
奨「っ…待って…!」
早歩きの(人1)を追いかけるように俺も廊下に出る。
(人1)の腕をギリギリで掴んで捕まえた。
『った……!』
奨「…!!」
手首を押えた(人1)の指の間から
床にポタポタと落ちる真っ赤な雫。
俺が無理やり手を引っ張ったことで刺さっていた点滴が取れてしまった。
奨「ご、ごめん!」
袋と針だけがぶら下がった点滴のスタンドを置いて、(人1)は手首を押さえて歩き出す
『着いてこないで』
冷たく、そう言い放った(人1)
針を刺していた手首から出る血の量は
言うまでもなく多いわけで
歩けば歩くほど
押さえる(人1)の右手と病院着は
血で染っていく。
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作者名:しろごはん | 作成日時:2023年10月30日 21時