君と見る桜をもう一度… (ページ18)

今日:9 hit、昨日:22 hit、合計:9,582 hit

・ページ18

『昨日ね…？』

静かな病室に（人1）の声が響く。

あぁ、こんな声だった。すごく綺麗で優しい声。

……大好きだった。

1年しか経っていないのに懐かしさを感じる。

『久しぶりに…奨くんの歌を聞いた…』

1年振りに聞く（人1）の口から聞く自分の名前

初めてじゃないのに驚いて思わず声が出そうになった。

『JO1、すごい人気だからさ…

今はスマホ1つさえあれば

いつでも聞けるでしょ？』

『テレビを付ければ必ず誰かが出てるし

小児科の子たちもよく歌ってる…』

あぁ…やっぱり

りっちゃんが言ってたのは（人1）だったんだ。

（人1）だったから…

｢緑の花じゃなくて桜を作ろう｣って

そう言ってくれたんだ。

散らばっていたこの2日間の出来事全てが綺麗に繋がった。

体操座りした自分の右手を握り締めれば氷みたいに冷たい。

『その度に…

"奨くん元気かな"って思い出しちゃうんだよね』

『思い出しちゃって…つらいから…苦しいから……

スマホは見ないようにして、テレビも付けなくなった』

中は見えないけど

昨日と同じ、純喜のすすり泣く声が聞こえる。

『だから昨日…本当に久しぶりに聞いたの』

『最初は…姿を見るつもりはなかった

辛いから…また思い出しちゃうから。』

『このベッドの上で…声だけ聞ければいいと思ってた』

『そしたらさ………ｺﾞﾎｯｺﾞﾎｯ…』

話が途切れたと思えば（人1）が咳き込む音が聞こえて、
思わず立ち上がった。

それと同時に、涙もこぼれ落ちた。

一体俺はこの2日、何回泣けば気が済むのだろう。

行き場のないぐちゃぐちゃになった感情を押し付けるように、柱に拳を打ち付ける。

でも…中に入ることができない。

『…ﾊｧ…ﾊｧ…………そしたらね…』

『身体が勝手に動いちゃって…

気づけば渡り廊下まで行って

奨くんを探して…歌を聴いてた』

『久しぶりに涙が出たよ

あの温かい歌声…何も変わってない』

純｢…そこまで想ってるなら

なんで会わへんの？…なんで…出ていったん？｣