君と見る桜をもう一度… (ページ14)

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奨side

純｢…奨くん…奨くん！！！！！｣

俺の肩を掴んで必死に揺さぶる純喜と

心配そうに覗き込むマネージャーさん。

気がつけば、事務所の駐車場についていた。

ロケ車でここまで寝てしまったのは久しぶりかもしれない。

奨｢ごめんごめん…ありがとう｣

コンタクトをつけた目はガビカビするし

おまけに鼻が詰まって喋りにくい。

せっかく止まった涙と落ち着いた気持ちが

また溢れてきてしまいそうで

いつもなら一緒に事務所へ戻る純喜を置いて車を降りた。

建物に入れば、振り入れ真っ只中の新曲が聞こえてくる。

奨｢っ…｣

いつもなら何も思わないのに。

ドアを開けて

必ずメンバーの誰かが飛びついてきて

はいはい、って引き剥がして練習するのに。

あれ、
ここのドアってこんなに重かったっけ。

ドアノブを握ったまま立ち尽くして動くことができない。

純｢…奨くん｣

溢れた涙を左手で拭おうとした時、右手に温もりを感じた。

俺と同じように目を赤くした純喜。

何か言いたいけど、言葉が出てこない。

そんな顔をしていた。

奨｢は、はやくしろってね！ごめんごめん｣

ドアを開けようと手に力を込めながら笑うけど、足も手も動かない。

行かないと。早くしないと。切り替えろ、仕事だぞ。

どんなにそう願っても目の前のドアを開けることはできなくて。

奨｢ごめん、飲み物買ってくる｣

涙が溢れないように上を向いて、練習場を通り過ぎた。

どうしても今は1人になりたくて足早に練習場から遠ざかる。

純｢なんで！！！！！｣

曲がり角を曲がろうとしたところで

練習場の前に立ち尽くした純喜が叫んだ。

振り向いたらついに目から涙が溢れてしまった。

純｢なんで…なんでそうやって笑うん！？｣

｢…なんで、自分の気持ちそんな風に隠そうとするん！？｣

｢なんで…なんで！俺になんも聞かへんの！？｣

｢どうして、なんで！って

俺にもっと怒ってよ！問い詰めてよ！！｣

遠目にだけど、純喜の目は

怒り、悲しみ。そして失望。

いろんなものが入混ざったように見えた。