君と見る桜をもう一度… (ページ13)

今日:14 hit、昨日:22 hit、合計:9,587 hit

・ページ13

汐｢あ！景瑚くん俺の卵焼き食べたやろ！｣

景｢は！？俺じゃないし！！｣

奨｢………｣

（人1）が姿を消してからの奨くんを見るのは

本当に…本当に辛かった。

年下組にからまれても笑えてないし

あれだけ毎日欠かさなかったトレーニングもやらない日が続いた。

撮影中もカメラがいなくなれば表情はもぬけの殻そのものだし

暇さえあれば窓から空を見上げてて

その横顔は…今にも消えてしまいそうだった。

そんな奨くんに何も知らない顔をしながら

俺は（人1）が入院する病院に通い続けた。

何度も繰り返される手術

まだ試されたことのない治験薬

手術後のICUでの治療

その度に、目が眩むほどの量の書類に

ひとつひとつ、サインをした。

本当は…こんなことをするのは

俺なんかじゃないはずなのに。

全ての治療に望みをかけて（人1）は頑張ってきた。

だけど…治らなかった。

半年前くらい、夏の終わり。

『あと1年。それ以上は無理だろうって』

気づくのが遅すぎたよねって

泣きも笑いもせずに（人1）は淡々と俺にそう言った。

わかってた。

全てを理解して過ごしてきたこの1年。

だからこそ…

大粒の涙を流す奨くんと意識を失くして運ばれていく（人1）

幸せになってほしかったから

大切なふたりだから

大好きな二人だから。

目の前の光景よりも

この全てを知ってしまっていた

自分の存在が憎くてたまらなかった。