溢れる愛を君に2【河野純喜】 (ページ9)

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（人1）｢そこから

何度もおじいちゃん達が家に来て

"大事な話をするから”って

また別の部屋に連れて行かれた。

その度に私に｢もうこっち来ていいよ｣って

迎えに来るお母さんは疲れきった顔して

おばあちゃんは空元気って感じで…

何にもわかんない子供なりに元気づけたくて

絵かいたりして見せてたけど

｢ﾊﾊﾊ…上手だね…｣って失笑されたよ｣

ついに目から涙が零れ落ちて

ふふって誤魔化すような笑いを浮かべて

（人1）は涙を拭った。

（人1）｢大きくなってから聞いたんだけど

全部、お父さんの金銭トラブルだった。

投資に失敗して、もう全然お金が無い。

私が中学に上がるお金すら厳しいかもしれない。

お母さんの貯金を全額使って、車も売って、

親戚中に頭下げてお金借してもらって

なんとか中学校に行けた。そう言われたの。｣

｢でも、そこからだった。｣

｢お父さんは会社に行かずに

何日も部屋にひきこもって

精神的におかしくなった。

薬漬けになって入院して

しまいには仕事を辞めて

訳の分からない宗教みたいなのに

お父さんがハマって

お母さんの稼ぎだけで生活した。｣

｢お父さんはどんどん

宗教的な考え方に固執して、

結果的に家族がバラバラになっちゃった。

お母さんは窶れるくらいに疲れきって

お父さんも私たちと交わろうとしなかった。

このままじゃダメになる。

そう思ってお母さんと2人で家を出たの。

お父さんのこと、恨んでるはずなのに

家を出るときのお父さんの顔が

忘れられなくてさ

今でも時々、

自分が家族を引き裂いたんじゃないかって

思っちゃう時があるんだ｣

あかん、思った以上に壮絶すぎる。

俺が泣く要素なんてないのに

なぜか鼻先がつんとして泣きそうになってきた。

純｢で、今に至るんか…｣

（人1）｢ううん、違うの｣

泣きそうな俺を横に

既に泣いてる彼女がふーっと溜息を吐いた。