50.『俺が知らなかった君の過去』 ページ8
(人1)「うちね、
お母さんしかいないんだ」
今の時代珍しいことでもないけどねって
俺ら2人だけが残った教室で
どんよりと厚い雨雲がかかった空を見上げて
そう、言葉を紡いだ(人1)の姿を
今でもはっきりと覚えている。
純「いつ…から……?」
(人1)「中3くらいかなぁ」
どこか自嘲するような笑みを浮かべながら
話をする彼女に引き付けられたというか
彼女の背負ってきた苦しさや辛さを
俺が下ろしてあげたい、楽にしてあげたい
直感的にそう思って
馬鹿な俺なりに
1つ1つ言葉を慎重に選びながら
彼女の話に聞き入った。
(人1)「小さい頃ずっとね、
"パパは病気なんだよ"って言われてきた」
「普通に会社に行って
お家に帰ってきて
家族みんなで笑顔でご飯を食べて
ぎゅって抱きついたら
ぎゅって抱き締め返してくれてた。
だからあの頃は病気なんて言われても
お父さんの何が病気なのか分からなかった」
お父さんと死別でもしてるんやろうか
話の流れ的にそう思ったけど
それよりもっと壮絶な過去を生きてきたんだと
その後の彼女の話で思い知らされる。
(人1)「小学生の時に夜遅くに
おばあちゃんの家に連れて行かれてさ」
「着いてすぐに(人1)ちゃんはこっちねって
別の部屋に連れて行かれたけど
お母さんが向かいの部屋に入っていく時に
項垂れて椅子に座るお父さんと
頭を抱えてるおじいちゃんが見えたの。
いっつもみんな笑顔だからさ
なんかもうその姿だけでも
脳にはっきり焼き付いたんだよね」
目の前の彼女の瞳が潤んできたのが見えて
少し心が痛くなる。
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作者名:しろごはん | 作成日時:2023年7月8日 12時