溢れる愛を君に2【河野純喜】 (ページ15)

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校｢…負った傷は人それぞれ

抱えてきた苦しみも辛さも

自分以外の誰かが計り知ることなんて

したくてもきっとできない…｣

校長室に流れる静寂をゆっくりと引き裂くように

校長先生が口を開いた。

校｢深い傷を負わされたのに

負わせたほうはなんとも思わずに

のうのうと生きている。

そんなことはざらにあるものだよ｣

良い歳して何年も引きずってるんじゃない

そう怒られてるのかと思ったけど

校長先生は違った。

校｢でも…彼は、純喜くんは…

全部受け止めてくれそうな気がする。

君が彼を愛する気持ちも

心に抱える闇も

全て彼は理解しているように見える。俺には｣

｢だから…全部彼に預けて幸せになればいい｣

｢痛みも悲しみもふたりで分け合えば良い

2人にはそれができると俺は思うよ｣

（人1）｢そう…ですね｣

事件に遭う前も

眠ってた2年間も

純喜を忘れてた1年も

どんな時だって純喜は傍にいてくれた。

嬉しい時も悲しい時も

どんな瞬間も純喜と2人で分かち合ってきた。

そう思い返せば

面と向かって純喜と話す勇気も

少しは湧いてきた気がする。

（人1）｢考える時間を頂けないでしょうか

自分の気持ちに折り合いをつけて

彼ともちゃんと話をして

決断を出したいんです｣

結婚の話も留学の話も

言いづらいし怖いけど

ちゃんと純喜に話そう。話さないと。

校｢プログラム的には

今学期を終えてもらって夏休み中に出国

そこから1年だから来年の夏に帰国だね

それを見据えて返事をして欲しい｣

（人1）｢わかりました

ありがとうございます｣

大量の資料と少しの勇気を抱えて

校長室を出た。