QuizKnock"ライター"の伊沢です ３

Side：Takuro . Kawakami ページ12

体が痛い。痛みに耐えきれず目を開く。どうやら俺は今床で寝ているようだ。

……頭も痛い。内側からも外側からも殴られているような痛みに再び目をつむる。

右手を伸ばしズボンのポケットに入っているスマホを取り出し時間を確認する。もう朝だ。

スマホのせいで右足も痛い。出して眠ればよかったと後悔する。

体を起こすと上半身にかけられていた布が落ちる。……福良さんのジャンパーだ。

正直昨日の歓迎会は何本目かのビールを開けたところから覚えていないが、深夜起きた時に皆と同じように床で寝ていたAを起こしてソファに移動させたのは覚えている。

その時には確かではないがもう俺を含む全員に何かが掛けられていたので最後まで起きていた人物……多分だがAが誰のものかわからないまま気を使って掛けてくれたのだろう。

ソファの近くで寝ている伊沢さんを避けながら音を立てないようにソファで眠っているAに近づく。

オフィスで仮眠している時は机に顔を伏せているので寝顔を見るのは初めてだ。

洗面台にメイク落としが置いてあったことから察するに恐らくすっぴんというやつだと思う。

普段どんなメイクか詳しくはわからないがそんなに変わらないように見える。目を開いていないから確信ではないけど。

思い返すと昨日は色んなの表情を見た。怒った顔、泣きそうな顔、照れた顔。

そう考えると昨日は大変な1日だった。


「んー……」

川「っ、」


起こしてしまったかと思ったが少し身をよじっただけだったらしい。


川「……お疲れ」


小声でそう呟きよじった時に顔にかかった髪を耳にかけて、顔を近づける。もしかしたらキスした時に起きてしまうかもしれないがその時は……謝ろう。

さっきとは違う意味で目をつむる。

すると地獄から来た悪魔のような、低く声で名前を呼ばれ足の甲に痛みが走る。


川「いっ……!!」


Aを起こしてはいけないと出そうになる声を抑え口を手で塞ぐ。

するとまたその声が聞こえた。


「寝込み襲ってんじゃねぇぞ……」


声の聞こえた方向、後ろを振り向くと伊沢さんが右手で拳を作りながらこっちを見上げていた。


川「襲ってませんけど」

伊「同意なしでキスするのは襲ってるだろ……頭いった……」

川「僕も伊沢さんに攻撃された左足が痛いです」


拳を作っているあたり足の甲をグリグリとされたんだと思う。痛い。

伊沢さんは起き上がり自分にかけられた上着を見て首を傾げる。

よりにもよって俺の上着だ。

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