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そのまま彼はあたしの口元を手で優しくなぞる。
そのまま頬に手を添えた。
「ツノ太郎さん、セクハラで訴えますよ」
「それは困る」
彼はククッ、と笑うと、あたしの顔から手を引いた。
「…A」
「…なんですか？」
「…お主、本当に魔法使いにされてしまうぞ？」
深刻そうなツノ太郎さんの瞳が、あたしを捕える。
「あたしは魔法使いになるのいいと思ってます、
…別に感情無くそうがなんだろうが、魔法使いになっちゃいたいですもん」
あたしがそう言うと、彼はハァ、と短くため息をついた。
「元の世界に帰れなくなる、という意味をよく考えたか？
感情を失ったら、何も感じられなくなるんだぞ？
お主はお主のままでいることが1番だ。
何も魔法使いになんてならなくてもいいじゃないか」
＿＿＿＿元の世界に帰れなくなる、か
心に少し刺さったその言葉とともに、あたしは少し考え込んでしまう。
「…あたし、元の世界のことあんまり思い出せないですし…
元の世界について、あんまりいい思い出もないような気がします」
「思い出せている記憶が、お前の全てだとは限らないと思うぞ」
そう言ってジリジリと距離を詰めてくるツノ太郎さんは、そのままあたしの上に覆いかぶさった。
「…ちょ、ほんとに近いですよ、ツノ太郎さん」
「まぁ、僕としてもお主が元の世界に戻らないのは好都合だが＿＿＿、
感情が無くなってしまうのは見逃せないな」
さらり、と彼はそう言うと、パッとあたしから離れた。
「感情が無くなるのはきっとどうにかなるって
学園長が言ってたし…大丈夫だと思います、あたし」
あたしはそう言って優しく笑い返した。
ツノ太郎さんも柔らかく微笑む。
…かっこよくて惚れかける。
いけないあたし！ちゃんとしろ自分！
「まぁお主が良いのなら良いのであろう。
＿＿＿あ、そういえば…」
彼が何かを言いかけた時、
＿＿ドンドン！と扉の叩く音が響く。
「＿＿誰か来たようだな…では僕はこれにて失礼する」
ツノ太郎さんはそう言ってあたしの頬にキスすると一瞬で消えてしまった
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作者名：あやぽん | 作成日時：2020年4月18日 19時
