七戦 ページ8
jra side
シャオロンが無事に退院して1週間ほど経ったケーキ屋での出来事だ
漂うケーキの香りに顔が歪むのがわかる
何故甘い物が苦手な私がここに来ているのかと言うと部下のアリーチェの機嫌を損ねてしまったからだ
退院したシャオロンとのやり取りが気に入らなかったようなのだ
ずっと不機嫌そうな顔で蛇と戯れていた彼女にどうした？と聞いたのが余計に頭にきたらしい
不機嫌な部下を甘い物で釣ろうと考えた私もいけないのだが、ケーキでなくても良かったと今では思う
香りも然る事乍ら隣で笑う茶髪の外交官に見つめられているからだ
さっさと買って帰ろう。アリーチェはショートケーキが好きだった筈だ
私はガトーショコラが食べたい
os「なあ。シャオロンって知らん？」
jra「はい？知りませんけど…」
やっべ、話しかけられた
大丈夫。私は紙を着けている、表情は見えないはずだ
それに前回会った時は男装していた
os「嘘はいけんなぁ。君みたいな特徴しかない女医さんの事を間違うはずないやろ」
jra「ですよね、知ってました。とりあえず、私の診療所に行きません？オスマン様」
os「なんや、知っとったんやな」
また、アリーチェの機嫌が悪くなるな。ケーキの意味はあるんだろうか
オスマン様も凄い買ってる。本当に甘味好きなんだな…
jra「ただいま。アリーチェ、お茶を入れて欲しいな」
ari「帰ってきて早々何？…いま、入れる」
os「お邪魔します〜」
刺々しい物言いだったアリーチェも私の後ろの人物をみて察したらしい
何のようなんだ一体。患者さんが居ないからいいものの
jra「なんの御用でしょうか。私はしがない町医者ですよ」
os「実はな、付けとったんよ。シャオロンが言ってた女医さんの特徴にピッタリ当てはまったから」
ストーキングか、趣味悪いな。
気付かなかった。いくら考え事をしていたとはいえ、どれだけ遠くから付けてたんだか
os「元々スカウトしたいなと思っとんや。ペ神もこんなに綺麗な手術痕は中々お目にかかれないって言っとったよ。ウチは諸事情で男は雇われへんから、腕のいい女医さんが欲しかったんよ。それに薬師さんも」
潜り込むには丁度いい。相手が旨い話を持ってきたんだ、乗る以外に選択肢はない
もうそろそろ、総統にも報告書を書きたかった所だ
jra「分かりました。謹んでお受けいたします」
os「嬉しいわ。宜しくな、女医さんと薬師さん」
そう笑った彼の瞳は光っているようにも見えた
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