十八戦 ページ19
jra side
jra「離して下さい。私、仕事に遅れてしまいます」
先程から私の白衣を噛んで離さない狼
なんなんだ一体
jra「貴方の飼い主は誰ですか？賢い貴方なら分かりますね？」
本気でヤバい
今日は書類整理もあるから早めに行きたかったのに
さっきから白衣の匂いを嗅いでいる
飼い主が私の近くに居た？
jra「離しておくれ。私の言ってる事が分からない訳じゃなさそうだね 」
頭を撫でるとゆっくりと離された白衣
あぁ…皺になってしまった
撫でて欲しかったのか
さて、飼い主はだれかな
動物を飼っていたのはひとらんらん様だけじゃなかったか
でも今日はゾムちゃんにしか会ってない
連絡だけ入れるか
jra「しんぺい先生。すみません、狼さんに捕まりまして…」
snp『はいはーい、ジュリアちゃん？え、何？狼さんって誰！？』
jra「それがですね…ってうわ!!ちょ、待ってｯ!」
後ろから飛び掛った狼が私を押し倒した
その拍子にインカムが故障。通話が切れてしまった様だ
少し誤解を招いた気がしないでもないが連絡はした
異変を察知して誰か寄越してくれるだろう
そんな事を知らない狼は頭を手にグリグリと押し付けてくる
jra「うーん。インカムに嫉妬したのかい？」
横に倒されたままじっと見つめてくる狼を眺める
jra「随分と綺麗な毛並みだね。愛されてる様じゃないか」
しばらく美しい毛並みを撫でていると
htr「女医さん？何してるの、こんな所で」
jra「ひとらんらん様。狼さんに倒されてしまいまして、移動しようとすると噛んで離してくれないんですよ」
通りかかったらしいひとらんらん様は動きやすい格好をして農具を持っていた
そういや農業が趣味だと噂で聞いた
東洋人だと言う彼は礼儀正しく義理堅いイメージがある
htr「イフリートか。ゾムのペットだよ」
jra「やはりゾムちゃんのでしたか。朝ご飯を一緒に食べたから匂いが白衣に付いたんですね」
白衣に付いた噛み跡を見せながら説明する
htr「珍しいな、イフリートが懐く事はあまりないのに。噛んで離さない人なんて初めて」
jra「そうなんですね。嬉しいですが仕事に遅れそうなので解放して欲しいんですが…」
突然イフリートが何かに反応して何処かに走り去った
jra「通じたんですかね？」
htr「さぁ？」
ひとらんらん様の手を借りて起き上がると明るい金髪とくたびれたスーツが見えた
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