恋歌 short story《 LDH》 (ページ8)

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恋音と雨空：坂本陣ページ8

side:Zin

好きやって伝えればええのに、願う先、怖くて言えんくて……
彩花の好きと俺の好きは募っては消えてく……

陣:彩花との時間が１秒でも長く感じられるんやったら、ずっとじゃなくてもええ……

そんなことを恋音の響く雨空へと願いかけるんや

彩花と離れてから数日目のどしゃ降りの雨の中、こんな日は必ず傘を持って彩花を迎えにいったのを思い出す。
そんな日にいつも待ち合わせする公園に行く居るはずのない面影の待っている傘もささんでずぶ濡れになっている彼女がいた。

陣:なんで……
貴:…………

あの悴んだ彩花の細い手をもう一度温めることができるのなら俺と彩花がであった始まりの時まで戻りたいよ……

あの時、「好きやで」って伝えればよかったのに
彩花の「好きじゃない？」と俺の「好きやで？」が揺れる恋と雨空……
彩花との時間が一秒でも長くなるのなら……
ずっとじゃなくてええから……攻めて雨がやむまでこのままでいさせて……

陣:……彩花……

君は俺の信じた明日も過去やって笑うんかな？
俺には流し去る力も無く離れたあの日のままで時間が止まる……
彩花の頬を伝う雫が二つ……
絶えず止まない雨のせいやと恋の音は詠う

いつのまにか幸せそうに町を行く恋人達を羨ましく思うことが増えていったんや……
いつからやろう一人が怖くなったんは……

でも今は束の間の幸せできることならこのまま……
ありふれた恋人になりたいんや
彩花の望んでいることと俺のいいたいこと今なら想いも重なるんかな？

好きやって伝えればええのに願う先はきっと怖くて言えんくて
横顔を見つめてるそれだけでももうええ！
せやけどたった一握りの幸せも彩花がくれたものやからほんまはずっと抱き締めていたい

陣:すれ違いも、俺と彩花がもう一度やり直すための試練やなんて直ぐに言えるのならどんなにええやろか……

好きという事実は通り過ぎて今ではもう愛してるんや……
彩花を失ってからの数日間でやっと知ったこの気持ちをほんまは確かめたくて……