たんぽぽのように ページ5
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屋敷の縁側で一人
ぼーっと月を眺める。
なんでわたしは思い出せないの?
思い出せ、早く。
きっと私にとって重要なこと。
早く、早く、早く…!!
『 …ちゃん 』
私はダメなやつなんだ。
大事なことを思い出せない。
忘れている。
鬼殺隊としても、強い剣士には
なれないんじゃないか。
記憶が戻らないだけで
何もかも不安になってくる。
『 Aちゃん!』
「 っ!?」
声のする方に振り向くと
鮮やかな金色の髪をした彼が
心配そうに私を見つめていた。
「 善逸くん… 」
『 何回か呼んだんだけど、
Aちゃん全然気付かないから…
大丈夫?なんか、顔色悪いけど… 』
「 ぜっ…全然大丈夫だよ!ごめんね 」
私としたことが…
考えすぎて全然気配を感じなかった。
『 … 』
「 … 」
二人の間に少し沈黙が続いたあと、
善逸が口を開いた。
『 Aちゃん!
ちょっと時間、ある?』
「 え?ある、けど… 」
『 じゃあ ちょっと来て!』
すると善逸は 私の手を取り、
小走りでどこかへ走り出した。
「 えっ?ちょっと、善逸くん!?」
『 もう夜だから、しーっ!』
なんて人差し指を口に当てながら、
楽しそうな善逸。
蝶屋敷の曲がり角を曲がり、
裏に入ると…
「 うわあ… 」
『 綺麗でしょ?』
そこは一面、お花畑が広がっていた。
「 蝶屋敷にこんなところがあるなんて
私 全然知らなかった… 」
『 ちょっと待っててね 』
そう言うと、何やらし始めた善逸。
なんだろう、心が落ち着く。
月明かりにキラキラと輝く お花畑。
なんだか懐かしい気持ちになる。
するとひとつの花が目に入った。
「 たんぽぽ… 」
鮮やかな黄色のたんぽぽ。
どの場所でも力強く根を張り、
咲くことができる花。
「 なんか…善逸くんみたい。笑 」
髪型がたんぽぽそっくりの善逸。
ビービー泣いてる姿をよく見るから
力強い感じはしないけど…
ただ、剣士としては強い気がする。
『 できた!』
と言いながらこちらに戻ってくる善逸。
『 ほら!』
ふわっと何かを頭に乗せられる。
『 シロツメクサの花冠だよ 』
そう言って笑う彼は、
たんぽぽのようにあたたかかった。
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mini(プロフ) - stereogirlさん» コメントありがとうございます(T_T)!更新頑張ります!! (2020年4月20日 21時) (レス) id: 91678dce2b (このIDを非表示/違反報告)
stereogirl(プロフ) - 強い女子と善逸くん、大好きな組み合わせです(笑)続き楽しみにしてます! (2020年4月20日 19時) (レス) id: ebd32c96af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mini | 作成日時:2020年4月12日 20時