Episode159 ／ 家出娘の帰還 ページ10
アジトまで車で移動した。
私の両手は常にマチか団長、シズクの誰かが握っていた。
もう逃げる気力なんてないんだけど。
そう伝えたらシズクに
｢Aは猫みたいだからだめ｣
となんとも意味の分からないことを言われた。
車でも私は後部座席の真ん中。
両隣にフェイタンとフィンクス。
後ろの座席にマチとシズク。運転は団長。
両サイドの圧が怖すぎてさらに逃げる気力を失った。
フェイタンなんて、ずっと窓の外を向きながら舌打ちばかりするもんだから思わず謝った。
｢別に怒てないね｣
｢安心しろA。フェイタンの照れ隠しだ｣
｢何言てるかフィンクス｣
もうなんでもいいから私を挟んでフィンクスを睨まないでフェイタン…
フィンクスが挑発するのが悪いんだけど。
数十分、車で走れば半年ぶりのアジトに着いた。
｢A？｣
『…やっぱりやだ』
もう既にみんな入ろうとしている中、私の足は進まない。
マチは私に目線を合わせて屈んで言った。
｢他のやつらも待ってる。みんなあんたを探してんたんだ、会ってやりなよ｣
特別強制するでもないその言葉に、自分を鼓舞して足を進めた。
マチは姉御みたい、というか面倒みがいいというか。
本当にいくら感謝しても足りない。今も昔も。
コツコツと6人の足音が響く。
そこにいるみんなの姿が見えた時、誰かに抱きつかれた。
｢A！おかえり！｣
｢シャル、今すぐ離れるね｣
｢フェイタン！嫉妬は醜いよ？｣
私を抱えながらフェイタンと睨み合うシャル。
今日のフェイタンはいじられ役のような…？
そんな疑問が顔に出てたのか、パクが教えてくれた。
｢フェイタンね、今日あなたを迎えに行くメンバーを決める時に真っ先に立候補したのよ。だから、みんなあんな感じなのよ。…おかえりなさい、A｣
シャルとフィンクス対フェイタンで軽い喧嘩を始めたのを見ながらパクはこそっと言った。
『フェイタンはそんなつもりじゃなかったと思うんだけどな、ははっ……パク、ごめんね』
｢気にしなくていいわよ。でも…悩んでるのなら教えて？団長…クロロが嫌なら私でもマチでも、シズクでもいいわ｣
旅団の女性陣は本当に神様みたい。パクに寄りかかって、心からのありがとうを伝えた。
私には、まだやるべき事が残ってる。
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作者名：ろりお | 作成日時：2019年8月17日 22時
