Episode157 ／ 死の狭間 ページ8
｢やぁ♦キミからボクに電話なんて珍しいね♥｣
ーー｢Aの場所教えな。ハンター試験は終わったんだろ？｣
人気のない場所でヒソカはクツクツと笑う。
｢なんでボクが知ってると思うんだい？｣
ーー｢もういい。あんたに聞いたあたしが馬鹿だった｣
彼はプーップーッと無機質な音を鳴らす携帯を見ながら、つまらなそうな顔をしていた。
20分ほど経っただろうか。
クランの能力はクラン自身の体力を使う。
だからいずれクランの体力不足で勝機が見えるんじゃないか。
なんて甘い考えを持ちながらひたすら逃げて、隙があれば斬りかかるというのを繰り返していた。
だけど、そんなことは一切なくむしろクランのスピードは少しずつ早くなっていて私との距離を詰められていた。
『…かっ…はっ』
｢どうした、もう立てないのか。…能力どころか念すら使わない。そんなんで俺に勝てるとでも思ってたのか？｣
爆発によって崩れた天井が頭に直撃し、口から血を吐く。
視界が歪み、立ち上がることすら出来なかった。
立て、立たなきゃ…っ
頭では分かっていても体は言うことを聞かない。
クランの持つペンらしきものが、私の首に刺された。
｢これは俺の血だ。数十分もすれば脳まで回ってお前の自我を奪う。拒絶反応……副作用でもう体も動かないだろう？｣
クランの言う通り、刺された首筋がビリビリと痺れ、少しずつその痺れは拡大して行った。
どうしよう、どうしよう
パニックで頭が真っ白になる。
このままじゃ本当に自我まで奪われてしまう。
そんなことになったら…っ
そのとき、入口の方でマシンガンのような音がした。
そしてその数十秒後、部屋に血だらけの男が入ってきた。
よろよろしていて今にも倒れそうだ、と思った時男の心臓から手が出た。
｢ちっ…お前一人で来たんじゃないんだ｣
クランが私を睨んで言う。
わたしは一人で来た、そう言おうとしたが舌や唇まで痺れが回ってきていて話すことすらできない。
クランは舌打ちを繰り返しながら、私を蹴りあげた。
『……っあ゛う』
言葉にならない呻きが口から漏れる。
｢団長、A死にかけてますけど｣
｢あんた、Aに何した？｣
そのとき声が聞こえた。
聞きたくて、会いたくて仕方がなかった彼らの声。
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作者名：ろりお | 作成日時：2019年8月17日 22時
