Episode197 ／招かれた悪 ページ49
『キールアっ！』
｢…あっぶねぇな。飛びつくなって｣
キルの後ろ姿を見つけて、いつもの如く飛びつけば頭をぐりぐりされる。
こめかみって結構痛いんだからな！！
｢怪我は？｣
『ないよ！』
あっそ、とキルは先を歩き出してしまう。
ツンデレだと信じてるよキルア君。
私の数メートル先を行くキルは俯いたまま呟いた。
｢…お前はやっぱり未知数だよな。俺らには隠し事ばっかりだし、嘘だってつく。｣
｢俺の妹だったはずなのに気づいたらどっか行くし、再会したと思ったらもう遠い存在なんだ…ッ｣
今だけは、いつも頼もしいキルの背中が小さく見えた。
ごめんね、キル。
私は隠し事をして嘘をつかなければ、あなた達といられない。きっと知ってしまったら私のことを嫌いになるでしょう？
キルに聞こえるように、ごめんねと謝る。
いくつもの私の想いをたった一言に乗せて。
私にはまだ嫌われる覚悟がないんだ。
分かってるよ、ぐずぐずしてたら運命は望まぬ方向へと進んでいってしまう。
どうせいつか忌み嫌われる運命なら、もう少しだけこの時間を味わいたい。
そう願ってはいるけれど、やっぱり私は彼らと一緒にいてはいけないのかもしれない。
その夜、部屋に戻った私はベッドに直行した。
疲れていたのかベッドに入った瞬間死んだように眠った。
深い睡眠は時に悪を招く。
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部屋の鍵穴へと針をさして少し動かせばカチャンと音がした。
ドアノブを捻れば開くはずの扉は押しても引いても開くことは無い。
もう一度針をさして少し動かせば、再びカチャンと音がした。
今度は普通に開いた。
｢無防備すぎるでしょ｣
ドアの鍵を開けっ放しで寝るなんて、女として終わってると思う。
ベッドですやすやとよく眠るそいつに、針をさして起きれないようにする。
こいつも俺らと同じ訓練を受けているわけだから毒は効かない。睡眠薬も同様。
｢もしもし、俺だけど。……うん、すぐによろしく。俺が運ぶからいいよ｣
執事に連絡してゾルディック家専用飛行船を呼ぶ。
寝たままのAと部屋にあった荷物を全て持って窓から飛び下りた。
一枚の手紙を残して。
ーゴン、キルへ
用事が出来た。しばらく戻れない。
Aよりー
ここは200階。
髪が靡いて鬱陶しい。
その夜、天空闘技場から一人の少女が消えた。
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作者名：ろりお | 作成日時：2019年8月17日 22時
