泣き虫少女と盗賊団 (ページ42)

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Episode189 ／能面野郎ページ42

｢さーあいよいよ本日の大目玉！！１階での引き分け以来負け無し！飛び蹴り1本で勝ち上がってきたA選手！！｣

｢そして対するは、現在5勝2敗とまずまずの成績を残しているサダソ選手！！｣

｢果たしてどんな戦いを繰り広げてくれるのでしょうかぁー！？｣

元気な実況のお姉さんの声に迎えられて、会場を見渡せばどこを見ても人だった。

今回の試合で私が気をつけることは…フードが取れないようにすること。ただそれだけ。

こんな大人数の前で蜘蛛ってバレたらいよいよやばい。

｢くくく…こんなに可愛い女の子と戦れるなんて光栄だね｣

『…ありがとーございます』

気持ち悪い、能面みたいな男の人。

昨日、私らの後ろに並んでたうちの一人だろう。

｢始め！｣

審判のその合図があってもどちらも動かなかった。

否、私は動けなかった。

凝をしていて、見えない左腕は私にとって見える左腕…だったんだけどなー。

少し興味があった。どんな能力なのか、身をもって試したかった。

だから避けなかった！言い訳じゃないよ？

｢おぉーっとー！？試合は始まっているのに両者1歩も動きませーん！！もしかして既にA選手！サダソ選手の見えない左腕に捕まっているのでしょうか！？｣

声も出せない、息もできない。

ついでに言えば動けない。

でも良かったー。口塞がれる前に息吸っといて。

10分くらいなら耐えれるように訓練されてるんですよーだ。

心の中で悪態をつきながら、どうやって抜けようかと考える。

死んだフリでもする？

今は大体動きが封じられてから30秒ちょい。

あと一分したら死んだフリをしよう。

そしたら普通のやつなら離してくれるでしょ！

苦しそうにじたばたしていると、サダソは気持ちの悪い笑みを携えて歩いてくる。そして、そのまま無抵抗の私を右手で殴った。

｢クリーンヒット！！｣

一発、また一発と殴られる度に、ポイントが加算されていく。

堅をしているから特に痛みは感じないが。

でもそろそろ一分だ。

そう思って私は死んだフリをした。

｢サダソ選手の一方的な攻撃の末、A選手動かないぞ！？審判、これはどう判定するのか！？｣

明らかに周りから見れば死んでいるように見えているはずなのに、一向に話す気配のないサダソ。

まじで？頭おかしいよこいつ。

｢残り10秒で起きなければ失神によるKOとみなします｣

審判がそう言ってカウントをとり始めた。