Episode187 ／ 知ってしまった ページ40
違うことを考え始めてしまった私の耳に聞こえてきたのは、キルの低い声。
｢もう遅いよ。もう知っちゃったんだから。俺もゴンも。｣
どうやらウイングさんが、キルとゴンに念を教えたことを後悔していたらしい。
｢教えたこと、後悔して辞めるんなら他の誰かに教わるか自分で覚えるかするだけ。それに、なんか嫌だけどAだっている。｣
そう言ってキルは私を見た。
『私基礎しかできないよー』
ふざけて言えばキルに頭を叩かれた。
｢お前嘘つくの好きだよなー…。お前が実力の１％も出してねぇの位分かるわ！｣
どんだけ見てきてると思ってんだ、キルは呆れたように呟いた。
バレてんのかーい！って言いそうになったけど堪えた。私えらいぞ。
｢途中で降りる気はありませんよ。私が教えます。｣
最後の言葉は私に向けられている気がした。
なんで、そんなに私を邪険にするんだろう。
出会った頃からちくちくと、彼は私をゴンとキルから遠ざけようとする。
ウイングさんはキルを修行に誘ったが、キルはそれを断った。
｢Aの試合見たいし。それに、抜け駆けみたいで嫌だからさ、ゴンが約束守れたら一緒に始めるよ｣
そう言って歩き出したキルに着いて行くと後ろからウイングさんの声が聞こえた。
｢ゴン君に燃える方の燃の修行なら認めると言ってください！｣
ゴンなら言われなくてもやりそうだけどね。
そう思っていれば、本当にやっていて目ん玉がとび出そうになった。
ゴンとキルは燃える方の燃をし始めたから、私はそっと部屋を出る。
試合まであと1時間。
相手は誰なんだろう…。
自分の部屋までゆっくり歩いていると、お姉さんがすごい勢いで駆けてきた。
｢やっと見つけたわ！！｣
『…どうしました？』
あまりにも凄い形相に思わず1歩後ずさった。
｢A様ですね？本日の午後7時からの試合はご存知でしょうか？｣
『…試合は知ってます。』
相手の伝え忘れ、とか？
なんだろう
｢あの、昨日A様と戦いたい、と申し込まれた方が2名いらっしゃいまして。どちらも譲る気は無いそうで。一人の方がどっちと戦いたいか、A様に選んで頂きたい、と言うのですが。｣
私人気者…？
まぁでも
『今日二つ試合でも大丈夫ですよー。』
私がそういえば、お姉さんはぽっかーんと口を開けた。
｢い、今なんと？｣
『え、だから今日二試合連続でも大丈夫だよって…。』
もう一度言い直せばお姉さんはかなり驚いていた。
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作者名：ろりお | 作成日時：2019年8月17日 22時
