Episode168 ／ 家族って ページ21
もうダメだ、そう思った時ミケは私の方を向いて少し止まった。
もしかして、と期待を込めてもう一度ゆっくり待て、と声をかけるとミケはその場にお座りした。
『…ふぅ…ミケ、私のこと家族だと勘違いしてる？』
おかげで助かったけど。
｢5年間一緒に過ごしてたら覚えるでしょ｣
『イルミ！！』
いつの間にか後ろにいたイルミは、私の横を通り過ぎて未だ座り込んでいる女の子の元へと向かった。
『…イルミだめ』
針を片手に持つイルミは、殺る気満々だ。
｢なんで？｣
『迷子だよきっと。帰してあげなきゃ』
その女の子はバスに一緒に乗っていた子だ。
きっとバスにでも置いてかれて、私についてきてしまったんだ。
そう思いたかった。
イルミは何言ってるの、みたいな顔で私を見ていた。
その時、女の子はイルミへとナイフを向けた。
それを軽く手で払ったイルミは、女の子のお腹を軽く蹴っ飛ばした。
イルミや私にとっては、痛くもなんともない程度だが女の子の肋は折れてるだろう。
｢復讐かなにかじゃないの、どうせ。｣
今までにないくらい冷たい目をしたイルミは、私の手を引いて歩き出した。
『…ミケ、女の子を傷つけずに追い出して。』
ミケはのっそりと立ち上がり、蹲って動けない女の子を掴んで外に出した。
｢Aは優しすぎるね｣
『止めないイルミもなんだかんだ言って優しいと思うけどなー』
そう言うとイルミは馬鹿じゃないの、と呟いた。
『あ、イルミ私の目隠しは？返してくれない？』
｢あぁ、部屋にある｣
返してね、と念を押してから少し走れば女の子と門が見えた。
｢お帰りなさいませ、イルミ様。…A様…？｣
『カナリア！元気だった？』
約5年ぶりに会うカナリアに抱きつけば、カナリアは身を固くした。
｢A、早くして｣
『…ちょっと待ってー。…ごめんね、カナリア！また時間がある時に話そーね』
イルミの元へ走りながら、振り返って手を振ると、カナリアは深く頭を下げた。
門から本邸まではかなり距離があるけど、走ればそれはすぐだった。
『…5年ぶりだけど私入っていいのかな、これ』
｢そんなこと気にするんだA｣
『失礼だなー』
イルミはちょっと待っててよ、と言ってどこかへ消えた。本当に消えた。
邸内を適当に散策しながら、懐かしんでいたとき、キュイーン…と音が聞こえた。
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作者名：ろりお | 作成日時：2019年8月17日 22時
