Episode89 ／ さよならは言わない ページ40
たくさんの話をした。
中でも興味を引かれたのはジンの息子、ゴンくんの話。
｢今あいつは12歳…ってとこだな。お前は？｣
『今10かな？』
｢…いつか会うかもしれんな、お前ら｣
私とゴンくんが？
彼もハンターを目指してたりするのだろうか。
『ゴンくんはジンを探してるんじゃないの？』
何気なく放った言葉に、ジンが少し暗い雰囲気を醸し出した。
｢今更どんな顔して会えばいいか分からねぇな。｣
『そんなもんかなー』
｢そんなもんなんだよ｣
そこからしばらく無言の時間が続いた。
いやな無言なんかじゃなくて、心地の良い空気が流れる。
沈黙を破ったのはジンだった。
｢もし…ゴンに会ったら俺の場所は言うなよ｣
『んー…なんで？』
｢自力で探せないようなやつに会う気はない。｣
自分の息子にでさえ厳しい…まぁ、八割方照れくさくて会いたくないだけだろうけど。
『うん、大丈夫。言わないよ』
山の出口、管理棟が見えてきた。
約半年の間、お世話になった場所だ。
少しばかり離れ難い。
｢次はジンさんのじゃなくて、自分のハンター
そう言って管理人さんは手を振ってくれた。
山をおりて、初めて話した広場へと歩く。
最初と最後は同じ場所でありたいという私のわがままだ。
｢じゃあな、A｣
『…うん…ってえ！？』
思わず声を上げてしまった。
『私の名前知ってたの？』
ジンに初めて名前を呼ばれた…今までは、お前、とかおいとか。
｢あ？最初に聞いただろうが。｣
そう言ってジンは私の頭を小突いた。これで何回目だろうか。
私は目隠しとフードを外して、ジンの顔を見た。
『ジンさん、約半年間本当にありがとうございました。ジンに会えて良かった。…会いたくないって言ってもいつかまた会いに行くからね！』
そう言いきって頭を下げた。
｢なんだよ急に改まって、気持ち悪いな｣
なんて毒づかれたが、それもジンの照れ隠しなことは分かっている。
『また！絶対会おうね！』
私は振り返らずに走った。振り返ったら今度こそ涙が溢れて止まらないことは分かってた。
Episode90 ／ 親父とそっくりな→←Episode88 ／ 合格のルチア
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 66人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
k.k - 一人目の弟子……カイト？ (2020年10月5日 17時) (
レス) id: db3fbbd863 (このIDを非表示/違反報告)
あやは(プロフ) - 美桜琉さん» コメントありがとうございます！読者様の反応が気になっていたので凄く嬉しいです笑モチベ上がります！頑張りますね~ (2019年8月2日 18時) (レス) id: df4b2b1b15 (このIDを非表示/違反報告)
美桜琉(プロフ) - ほんっとうに面白いです、、、これからも更新頑張って下さい！ (2019年8月2日 18時) (レス) id: 95c48d4791 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ろりお | 作成日時：2019年7月21日 8時
