43ラバー(加筆修正済) ページ44
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『…ありがとう。うれしい』
でも、ごめんね。好きな人がいるの。
淡々と告げた私にわかってたよって、彼はまたも笑う。
教師だから、という理由を使わなかったのは、彼の気持ちと向き合っていないような気がしたから。
『…ちゃんと言えてよかった』
「ありがと」と笑ってお礼を言える彼の強さが眩しい。まだ十代半ば、青春真っ盛りの君はこれから先も、色々な人と出会って、色々なことを体験して、きらきらした、宝石みたいな恋を沢山するんだよ。
「…俺帰るね、」と水気を含んだ声に気を付けてね、と言葉を返す。
ドアの閉まる音が響いて、しんと静まり帰ってしまった保健室の中でふうと溜息をついた。
『…頑張れ』
こんな私を好きだと言ってくれた一人の男の子に、ほんの少しのエールを静かに送った。
***
『…遅かったな』
『そ？』
リビングに続くドアを開けて、見えたのはソファに座る消太くん。重たい鞄を机に置いて、時計を確認すれば午後7時を回ったくらいだった。
そういえば、
『…さっき逃げたでしょ』
保健室のことをまだ許してないぞ。彼をじっと見つめると居心地悪そうに目線を反らす。だんまりを決め込む消太くんに、もうと小言を漏らした。
溜息を一つ落とすと、リビングを出て、自室の机の上に置いてある婚約指輪の入った小さな箱を手に取った。
上鳴くんに、好きだと言われたことは内緒にしておこうと決めた。だってなんか、私と上鳴くんだけの秘密にしておきたかったから。きっとばれたら怒られる。
でもね、私が好きなのは消太くんだけなんだよ。
だからこのくらいの秘密は許してね。
薬指に、その華奢な指輪をゆっくりとはめた。9号のそれは、私の指にぴったりとはまる。
真っ暗な部屋の中で手を伸ばす。月の光に照らされたそれを見て、嗚呼、綺麗だなと思う。
『…そろそろ行くぞ』
『ん、待って』
リビングから追いかけてきた彼の声に慌てて返事をした。
もうとっくに玄関で靴を履いている彼の手を握って、二人で家を出る。
手に持ったのは、財布と携帯と、それと婚姻届け。
『つけたのか』
『うん。せっかくだしね』
私の薬指に目敏く気づいた彼は、少しだけ口角を挙げて笑った。嬉しいなら嬉しいって言ってくれればいいのにね。
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トマトまと(プロフ) - 続き→ちゃんと、プロポーズは彼からでしたね。主ちゃんの願いが叶って良かったです。最後に、ayaさんの文章の書き方、読みやすく、面白く、最高でした！素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございました！！ (2022年11月20日 10時) (
レス) id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 完結おめでとうございます！プロローグとエピローグの違いにほんわかしました。主ちゃんの行動、相澤先生の考え、ミッドナイト先生の話、上鳴くんの恋心、沢山の人物によってこの物語が完成していて、読んでいてとても楽しかったです！ (2022年11月20日 10時) (レス) @page47 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - ぱりぱり。さん» 感情の変化や、言葉選びには殊更気を使って書いていたのでそこを汲み取っていただけて本当に嬉しいです泣書いてよかったと思いました、、、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました！！！ (2021年6月13日 22時) (レス) id: 13840754e4 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 27さん» 大好物！！良かったです！！笑こちらこそ最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました！！また何処かで見かけたらよろしくお願いします！ (2021年6月13日 22時) (レス) id: 13840754e4 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 柊さん» 最後まで丁寧に読んでくださって、本当にありがとうございます泣ほっこり、していただけて良かったです、安心しました！！本当に最後までお付き合いいただきありがとうございました！！ (2021年6月13日 22時) (レス) id: 13840754e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：aya | 作成日時：2021年1月10日 23時
