26ラバー ページ27
----------------------
それから何回か電話をかけてみるが、電源を切っているのか繋がらない。何度目かの無機質な機械の音が聞こえた瞬間、嫌な胸騒ぎが自分を襲った。
あらゆる可能性を考えてみる。彼奴自身が酔っ払って電話を切っただとか、ミッドナイト先生が電話を切っただとか。
だが、それらを考えてみても、俺からの電話に反応しない理由が分からないし、そもそも今電源が切られているのはなぜなんだ。
…まさか浮気、
とそこまで考えていると手に持っていた携帯が勢いよく震えだす。
彼奴か、と思いながら、画面を確認して、一つ舌打ちを零すと通話ボタンをタップした。
『お、出た出た！！イレイザー今何してる？』
『何の用だ』
『今から飲まねえ??いい酒が偶然手に入ってよ〜』
『今、それどころじゃ、』
「それどころじゃない」と言い切る前に、ふと此奴なら何か知っているんじゃないかと思い直す。
『…聞きたいことがあるんだが、』
『え、何よ』
『Aと連絡つかねぇんだ。…なんか知らないか』
先ほど浮かんだ浮気というワードに背筋が凍る。俺の想像でしかないが、これが一番辻褄があっているような気がする。…嫌な想像だ。
「はぁ〜？香里ぃ？」とあきれたような声に続き、「俺が知るわけね―でしょ〜」と今考えると当然ともいえる答えが返ってきた。
『何、喧嘩でもしちゃった？ついに愛想つかされちゃった？？』
『んでてめぇはそんなに面白そうなんだ』
『だってお前ら滅多に喧嘩なんてしねーじゃん』
けらけら笑う山田に殺意が湧くが、ぐっとこらえてため息をついた。
『…何か知らねぇか。些細なことでもいい』
『だから知らねぇって。俺よりお前のほうが知ってるでしょ。…あ、あとはミッドナイト先生？』
『…ミッドナイト先生、』
山田の言葉を聞くと、どうして気が付かなかったのだろうと思う。ミッドナイト先生に連絡してみればいいじゃないか。実際一緒に職員室を出るところを見たのだし、彼奴の行きつけの店なんてのも知ってるだろう。
『…山田、もう切るぞ』
『え、ちょ、』
一度耳から携帯を離すと電話帳から一人の名前を探す。
…なんで気づかなかったのか。それだけ焦っていたということか、。俺は狼狽えるとこんなにも頭が働かなくなるのか。
随分前に登録して年に一度か二度しか使用したことのない名前をタップする。
一縷の望みをかけて、無機質な電子音を聞いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 576人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
トマトまと(プロフ) - 続き→ちゃんと、プロポーズは彼からでしたね。主ちゃんの願いが叶って良かったです。最後に、ayaさんの文章の書き方、読みやすく、面白く、最高でした！素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございました！！ (2022年11月20日 10時) (
レス) id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 完結おめでとうございます！プロローグとエピローグの違いにほんわかしました。主ちゃんの行動、相澤先生の考え、ミッドナイト先生の話、上鳴くんの恋心、沢山の人物によってこの物語が完成していて、読んでいてとても楽しかったです！ (2022年11月20日 10時) (レス) @page47 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - ぱりぱり。さん» 感情の変化や、言葉選びには殊更気を使って書いていたのでそこを汲み取っていただけて本当に嬉しいです泣書いてよかったと思いました、、、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました！！！ (2021年6月13日 22時) (レス) id: 13840754e4 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 27さん» 大好物！！良かったです！！笑こちらこそ最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました！！また何処かで見かけたらよろしくお願いします！ (2021年6月13日 22時) (レス) id: 13840754e4 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 柊さん» 最後まで丁寧に読んでくださって、本当にありがとうございます泣ほっこり、していただけて良かったです、安心しました！！本当に最後までお付き合いいただきありがとうございました！！ (2021年6月13日 22時) (レス) id: 13840754e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：aya | 作成日時：2021年1月10日 23時
