真実は ページ20
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
上を見上げた先にあったのは、緊張と不安が入り混じったような顔をした彼女。
そんな彼女を見て、芦戸と耳郎は顔を見合わせた。
『…ごめん、それ今じゃないとダメ？』
何かを言わなければと口を開けば、出てくるのはそんな冷え切った言葉で。
それを聞いた彼女は「え、っと」と言葉を詰まらせる。
困らせたいわけでも、悲しませたいわけでもないのに。
『…今、じゃなくてもいいんだけど。時間あるときとか、』
『悪い、…ちょっと無理』
彼女の顔を見ることが出来なくて俯いた。「そ、っか…」聞こえてきた声がほんの少しだけ震えていて、はっとする。
「ちょっと上鳴、今時間あんでしょ」「ウチらの話とかどーでもいいから行ってきなよ」と二人が彼女の様子をみて上鳴を窘める。
だがその二人の言葉を聞いても、上鳴は決して首を縦に振らなかった。
『…いいの、ごめんね。二人とも、ありがとう』
そんな声と共に、気配が消えた。その瞬間、顔をあげると見えたのは片手で顔を覆いながら教室を出ていく彼女の姿。
ぼーっとそれを見つめていると
丁度その時視線の先に轟焦凍の姿が見えて、上鳴は溜息をつきながら立ち上がる。
『轟、』
『お、…なんだ？』
いつも通りぽけーっとした様子。上鳴は少しだけ目線を外しながら片手で頭を掻いた。
『…わり、お前の彼女、さっき泣かせちまった』
『は？』
『いや、ごめん。ちょっと色々あって、』
「教室出ていったから、追いかけてもらってもいいか」、きっと自分が行くより、彼氏である此奴が行った方が良い。そんな判断の元、そう告げると、目の前の轟はぽかんとした顔で此方を見た。
『…彼女？何言ってんだ』
『え？』
『俺に彼女はいねぇ』
淡々とそう告げる轟に、上鳴は目を見開いた。
どういうことだ、頭の中はそんなワードで埋め尽くされ、上手いこと言葉を発することができないまま時間が過ぎていく。
「い、や」漸く出てきた言葉を必死に紡いだ。
『…土坂、とお前。付き合ってんだろ？』
一緒に登校する姿、昼食を食べる姿、下校する姿、その他諸々。頭の中に再生するのはそんな場面ばかりで、ぎゅっと両手を握りしめる。
轟は又もぽかんと呆れたような顔で此方を見つめると、一つ大きな溜息を落とした。
『…付き合ってねぇ』
その言葉に、上鳴は又も目を大きく見開いたのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 806人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
無気力に自信が有る人 - 続きがあるようで無い終わり方……？君○代みたいに。更新してもらいたいですね。面白くて大好きな作品なんで！恐らく更新してない期間が１ヶ月以上続いたんですよね。それで、、、。せめて更新停止だったら希望があるんですが。 (2022年2月8日 0時) (
レス) @page23 id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
ふぬ - これで終わりはないわwww (2022年1月16日 2時) (レス) @page23 id: 2680fe3345 (このIDを非表示/違反報告)
上鳴とりあ@個性:帯電と宝石(プロフ) - 続き気になります…とても面白いです！ (2021年7月8日 0時) (レス) id: 49f19b8511 (このIDを非表示/違反報告)
兎斗(プロフ) - え、お、終わり…？ですか…？続きが気になりすぎます…どうか更新してください…！！ (2021年7月4日 20時) (レス) id: d97bb948a4 (このIDを非表示/違反報告)
ミツキmitsuki(プロフ) - これで終わったら悲しい‥‥ (2021年7月4日 17時) (レス) id: 75866be232 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：aya | 作成日時：2020年6月28日 20時
