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このパン屋を見つけた人が最初に味に驚いてSNSで発信したところ、それがプチバズりした。その影響でパン好きの間ではかなり有名なパン屋なのである。
都内で活動しているのは知っていたが、七海はそのパン屋を一度たりとも拝んだことがなかった。
人生で一回は食べてみたいと、そう思いつつも情報も何も無いと来ればそれはもう一種の夢みたいなものだった。
そして、今日。たまたま買い物に出かけていた先輩カウンセラーが、そのパン屋を見つけたと言う。
七海はそれはもう、喜んだ。任務中だったが、ガッツポーズした。それを見た五条に「七海お前、熱あるんじゃ…」とまで言われた。失礼な先輩だ。
「七海くん、何が好きか分からなかったからいっぱい買ってきちゃったわあ」
「なんでも好きですよ。ありがとうございます。いくらでした?」
「いいのよお。私も食べたかったし、一緒に食べましょう?七海くん何時もお土産くれるでしょう?たまには私だって先輩面したいわ」
財布を出した七海を清宮は制する。性格が根っからの紳士である七海からしたら女性に料金を払わせるなどいかがな事かと思った。だが、この先輩は意外にも頑固で一度こうと決めたら梃子でも動かないことを、高専からの経験で知っている。
後で金だけ置いていこう、そう決めて七海は「ありがとうございます」と告げた。
目の前のパンに、今は集中することにした。
***
「わ、美味しいわ。何これもちもち!」
「これは…凄いですね、驚きました」
2人で珈琲を飲みながら、色々なパンを実食していく。ハード系なパン、ソフト系なパン。菓子パン、惣菜パン。そして七海の好きなカスクートもその中には入っていた。
小麦の味わい深さに2人で驚き、その柔らかいもちもちした食感にまた驚いて。やはり幻のパン屋は違うなと改めて思う。
「七海くんが教えてくれるパン屋さん、いつも美味しいけどここのは別格ねえ」
「私も都内のパン屋ランキングが変動しました、文句なしの1番です」
「あらあ。そんなのつけてるの?七海くん面白いわあ」
くすくす笑う先輩に、七海もほんの少しだけ笑う。これが五条だったなら、夏油だったなら、きっとイラッときていたであろう「面白いわ」発言だったが、彼女の言葉には七海も毒気を抜かれてしまう。そんな雰囲気を持った女性なのだ。
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chiaki0708(プロフ) - 恵くんの恋を応援し隊 そして高専時代の五条さんの口の悪さ最高笑笑いってる姿が想像付きます笑笑 (2022年1月18日 18時) (レス) @page50 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
mari(プロフ) - 尊い、カウンセラー室の壁になりたいです。 (2021年12月28日 2時) (レス) @page49 id: e3d45e5295 (このIDを非表示/違反報告)
陽夏 - ほっこりしていて、素敵なお話ですネ!!読んでてほっこりしました! (2021年11月21日 17時) (レス) @page47 id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 楓さん» 楓さん、コメントありがとうございます!!続編でもよろしくお願いいたします! (2021年7月19日 21時) (レス) id: b35ce74133 (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 続編だとっ!これからも応援してます!頑張ってください(´∀`) (2021年7月17日 10時) (レス) id: 92699b37e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aya | 作成日時:2021年7月3日 21時