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「悟くんったら、まだ伊地知くんに報告書の処理させてるのねえ」
「あはは…五条さんは忙しいですから」
「それはそうだけど、伊地知くんも忙しいでしょう?…あ、私がやりましょうか、それ」
珈琲とケーキを囲みながら、雑談をしていると自然と仕事の話になる。五条の話や、書類の話、彼女の仕事の話。色々なことを話しながら、伊地知はゆったりとした時を過ごす。
彼女の申し出にいやいや、と首を振った。
「そんなことさせられませんよ。清宮さんには清宮さんの仕事がありますし」
「でも、私結構余裕ある時多いし…書類ってあれでしょう?不備がないか確認して上に提出するんでしょう?それなら、学生時代よくやってたから」
ね?と笑いかけてくる彼女に「じゃあ、もししんどくなった時はよろしくお願いします」と告げた。頷く彼女はとても嬉しそうだ。きっと人から頼られるのが好きなんだろうなと思う。
久しぶりのリフレッシュ時間。五条に無理難題を押し付けられることも無い。夏油に胡散臭い笑みを浮かべられ、からかわれることも無い。嗚呼。この時間が一生続けばいいのに。そんなことを本気で思った。
…きっとそれがフラグだったのだ。
「お疲れサマーランド〜!A、会いに来たよ〜!」
「悟、ずっと思ってたけどその挨拶どうにかならないのか?」
カウンセリング室のドアが開く。一緒に聞こえてきたその声に伊地知はびくりと肩をあげた。聞き覚えのある声、そして、ずっと探していた人物の声。
「あらあ。悟くん、傑くん。いらっしゃい」
彼女はそんな二人ににこやかな笑みで対応する、誰に対しても同じ態度で同じ笑顔で、彼女はまるで聖母のようだ。
そんな彼女の前ではあの五条と夏油もにっこり。
そしてその笑顔はソファに座る伊地知を認識すると、消えた。
あ?と五条の低い声が聞こえる。
「おい、伊地知なんでいんの。」
「おや。本当だ。伊地知、久しぶりだね。」
――あ、終わったな。
と伊地知は思った。高専時代からずっとこうなのだ。彼女と話しているだけで、2人から睨まれる。彼女に憧れを抱きつつも、近づけなかった理由はそれだ。伊地知はまだ死にたくなかった。特級二人を敵に回すなど、そんなのもう綱渡りを命綱なしで歩いているようものだ。
夏油の大きな手が伊地知の肩を掴む。ひ、と声をあげた。
「あはは。伊地知。まさか彼女とずっと2人でいたわけじゃ、ないよね?」
その目には光がなかった。
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chiaki0708(プロフ) - 恵くんの恋を応援し隊 そして高専時代の五条さんの口の悪さ最高笑笑いってる姿が想像付きます笑笑 (2022年1月18日 18時) (レス) @page50 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
mari(プロフ) - 尊い、カウンセラー室の壁になりたいです。 (2021年12月28日 2時) (レス) @page49 id: e3d45e5295 (このIDを非表示/違反報告)
陽夏 - ほっこりしていて、素敵なお話ですネ!!読んでてほっこりしました! (2021年11月21日 17時) (レス) @page47 id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 楓さん» 楓さん、コメントありがとうございます!!続編でもよろしくお願いいたします! (2021年7月19日 21時) (レス) id: b35ce74133 (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 続編だとっ!これからも応援してます!頑張ってください(´∀`) (2021年7月17日 10時) (レス) id: 92699b37e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aya | 作成日時:2021年7月3日 21時