花火大会�� ページ14
＿＿＿＿＿＿＿＿＿
『...あ、もしもし、瀬呂？ああ、俺。見つかったから、...うん』
携帯電話を耳に当て、範太に電話する鋭児郎をぼーっと見つめる。
ぎゅっと浴衣を握りしめると、まだ、はだけていたことに気が付いて、急いでそれを綺麗に戻した。
涙も出尽くしてしまったみたいに、頭が働かない。
赤い髪の毛、大きな男らしい背中の彼
...彼が来てくれなかったら、一体どうなっていただろうか。
それを考えると、先程の嫌な感触が蘇ってきてまたも震えが止まらない。
ぎゅっと自分自身を抱く。
嫌な記憶を消し去るように、自分の肩をさすった。
『...A立てるか？』
いつの間にか電話を終えた、鋭児郎が目の前に立っている。
こくりと頷くと、悲しそうに眉を下げて彼は私に右手を差し出した。
ゆっくりとその手に自分の手を重ねる。
『...あいつらがいるとこまで、行こう。』
こんなところにずっといると気が狂ってしまいそうになる。
きっとそれを配慮してくれたのだろう。
皆との集合場所は違う場所の様だ。
彼の温かい右手をぎゅっと握りしめ、歩き出す。
『...助けてくれて、ありがとう』
その背中に、改めてお礼を言うと、彼は乾いた笑いを見せた。
『...助けられてねーよ。お前を怖い目に合わせちまった』
その強く握られた右手から、彼の後悔や怒りが伝わってくるようで、私はぐっと息を飲む。
彼の目には入っていないだろうが、私は頭を横に振った。
『...そんなことないよ、鋭児郎がこなかったら、私』
私は多分、もっと心に酷い傷を負っていた。
もしかしたら、男性不振になっていたかもしれないし、いつ起こるか分からないフラッシュバックに苦しまなければいけない人生だったかもしれない。
...幼いころからの夢だったヒーローへの道も閉ざされていたかもしれない。
歩き続ける彼を他所に、私はぴたりと足を止めた。
どうした、と不思議そうな顔で振りかえる鋭児郎に笑って見せる。
『...鋭児郎は私のヒーローだよ』
紛れもなくそうだった。あの時、あの声が聞こえて、私は嬉しかったし安心した、
来てくれた、って思ったんだ。
そんな私の言葉を聞いて、彼は大きな目をさらに見開く。
口をパクパクとさせ、次の瞬間ぐっと閉ざした。
『鋭児郎...』
泣きだしそうにも見えるその表情を見て、思わず彼に手を伸ばすと、
がっと先程のように抱きしめられる。
『...俺は、お前のヒーローになりたかった、ずっと』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1049人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
no name(プロフ) - 私、気づいてしまったんです…。私は最終章（？）を一番に読んでしまったんです…！笑それに気づいて1と2も読ませていただきました！爆豪派閥に入りたすぎて、このお話が本当にあったらなぁ…とずっと思ってました笑とにかく面白くてキュンキュンする作品をありがとう！ (2021年9月27日 0時) (
レス) @page36 id: b6b1793042 (このIDを非表示/違反報告)
前歯 - え、天才ですか？きゅんきゅんが止まらないよーー！ (2021年8月26日 17時) (レス) id: 2516f56512 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - (・ー・)さん» 瀬呂くんの沼に入ると抜け出せませんよねわかりますうう！！！ほんとですか！！そう言ってもらえると頑張れます！！本当にいつもコメントありがとうございます！！！ (2020年4月23日 20時) (レス) id: cf80925120 (このIDを非表示/違反報告)
(・ー・) - 更新ありがとうございます！ 瀬呂君好き！かっこよすぎる！ これからどうなっていくのかとても楽しみです！ 私はこの5人が推しなのでオチが誰になろうと嬉しいです♪ 明日の更新も楽しみにしています*^^* (2020年4月23日 15時) (レス) id: bfc3f52eee (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - (・ー・)さん» 誰が好きなんですかね(笑)皆さんの納得いくような結果じゃないかもですが、頑張ります！！本編完結次第、リクエスト書かせていただきますありがとうございます！！！ (2020年4月22日 22時) (レス) id: cf80925120 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：aya | 作成日時：2020年4月7日 21時
