海(2)�� ページ33
____________
それはここ数ヶ月で、幾度となく聞いた一言。
私は彼の言葉を聞き逃しはしなかった。
ゴクリ、と唾を飲み込んで、隣にいる電気を見つめた。
驚くほど、いつも通りの笑顔で彼は笑う。
『……じょうだ、』
『冗談じゃねーよ、本気』
私の苦し紛れの一言は、直ぐに跳ね返され、私はやむを得ず口を閉じる。
こんなにも動揺を隠せないのは、きっと、彼がかっちゃんの時と同じでもなく、範太の時とも同じでない
完全ないつも通りの彼だから。
そんな私を見て、少しだけ眉を下げて笑った彼は口を開く。
『……最近さあ、何しててもお前の顔が浮かぶんだ』
さあ、と海風が吹く。
びちょびちょに濡れていた制服はいつの間にか乾いていたようで、それを優しく受け止める。
遠い薄暗くなった海を見つめる彼を、私は見つめた。
『ふとした時、』
『例えばさ、面白いテレビがあった時とか、ケーキ食べてる時とか』
ぎゅ、と私は手に力を込める。
膝と私の胸の距離が一気に近づいて、その振動が膝に伝わった。
『“あー、Aこの芸人好きそうだな”とか、“このケーキあいつにも食べさせてーなー”とか』
『しょーもねーことなんだ、ほんと。』
夕日がもうすぐ沈みそう。
薄暗さに慣れてきた私の目は電気の顔をしっかりと認識する。
『んで、ある日俺気づいちゃった』
海を、遠くを見据えていたはずの電気の顔はいつの間にか私の目の前にあった。
彼の曇りのない瞳が私を捉えて離さない。
『……Aのこと、好きなんだって』
真剣そうな彼の顔に、もう、冗談？だなんて聞けなかった。
嘘でも言えなかった。
ぐ、と私は喉を絞める。
なぜなら、私には何も言えないことを私は知っていたから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 997人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aya(プロフ) - (・ー・)さん» あああもう嬉しいです(;_;)こんな妄想小説が1番でいいんですか！？！？！？めっちゃ嬉しいです、本当に見つけてくださってありがとうございます(;_;)(;_;) (2020年4月7日 21時) (
レス) id: 3b62513bd4 (このIDを非表示/違反報告)
(・ー・) - 更新ありがとうございます！ 今まで読んでいた夢小説の中でこの小説が一番好きなんですよ！しかもこの小説は私の推しばっかりで本当に見つけてよかったなとおもっています♪ これからも頑張ってください*^^* (2020年4月7日 20時) (レス) id: bfc3f52eee (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - 羽さん» あああわかりみが深すぎます瀬呂くんに1回はまると抜け出せませんよね！？((((これからも瀬呂くんにキュンキュンして頂けたら幸いですヽ(^0^)ﾉ (2020年4月7日 17時) (レス) id: f1d7a05c02 (このIDを非表示/違反報告)
羽(プロフ) - 毎回楽しませて頂いてます！とっても面白くてキュンキュンします！！瀬呂くんがかっこよすぎてもう辛いです笑笑 (2020年4月7日 17時) (レス) id: da11f27698 (このIDを非表示/違反報告)
aya(プロフ) - リョンリョンさん» ええええ！？！？数あるヒロアカの神作品の中で1番ですか！？！？！？嬉しすぎて吐血しそうです((ありがとうございます泣 (2020年4月7日 17時) (レス) id: f1d7a05c02 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：aya | 作成日時：2020年3月30日 15時
