『インモラル 3』

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玉森くんの手を振り払うと「いててて…」ってうずくまる玉森くんに焦った。

「あっごめん！大丈夫？」

「うっそー」

むっかー。

やっぱりムカつく。

「冗談はこれくらいにして、とにかくあの人はやめたほうがいいですよ。なんか危険な感じ」

「やめたくない…」

「何言ってんの？旦那さんどうすんですか」

「…」

「北山さん」

「もーいいの！別に家庭捨てようと思ってるわけじゃないんだから」

「…ただの遊びってこと？」

違う。

遊びじゃない。

「そう。ほら、あんなイケメンに相手されてラッキーみたいな」

言ってて悲しくなってきた。

「嘘だ」

だから、何なのこの子は。

傷を抉らないでよ。

「嘘じゃないから」

目に溜まった涙が頬を伝った。

「遊びなら泣いたりしないよ…」

零れた涙を玉森くんの指がすくった。

「わかるんだって。…俺もそうだったから」

玉森くんの顔が歪む。

「もうやめたほうがいいよ、藤ヶ谷さんは。北山さん、後でめっちゃ泣くことになりそうだし、心配…」

やっぱり玉森くんは皐月さんを本気で好きだったんだ。

皐月さんにフラれた時どんなに傷ついたんだろう。

想像すると苦しくなった。

自分に重ねてしまうから。

「…よしよし、辛かったね」

玉森くんの頭を撫でてあげた。

この子とは分かり合える気がする。

玉森くんは一瞬キョトンとした後、神妙な面持ちになった。

「…北山さん、慰めて」

ぎゅっと抱きついてくるから引き剥がそうと思ったけど、背中を痛めてるし戸惑う。

「…これも充分まずいよ、玉森くん」

「大丈夫、片方には全く気持ちがないから」

「私だってないし」

「…」

あ、でも皐月さん、また玉森くんのこと落としたいって言ってたよね。

「皐月さんがもしまた玉森くんと付き合いたいって言ったらどうするの？」

玉森くんは抱きしめていた腕を緩めて私を見つめた。

「大丈夫、もうちゃんと吹っ切れたから」

強がる玉森くんが痛々しいけど、余計なことを言うとまた大きなお世話だと言われそうだしやめておいた。

私だって藤ヶ谷さんのことで色々言われるのは嫌だし。

玉森くんが何か言いたげに私を見ている。

あ、そうだ。

「玉森くん、私と藤ヶ谷さんのこと誰にも言わないでくれるかな？」

「…どうしよっかな」

何で？！

私は皐月さんと玉森くんのこと誰にも言ってないのにっ。

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