ぼくたちの失敗

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「へぇ〜、なんか意外ですね」

北山さんは悪びれもせずそう言う。

「…どうして？」

先生は抑揚のない声で北山さんに聞いた。

なんか空気が悪いような…。

「いや、結婚を約束してるほど親しくみえなかったんで」

「そうなのよ、北山さん。だから私もびっくりしたわ」

奥様が話に乗っかってきた。

「ですよね〜」

「まあまあ北山くん、いいから飲みなさい」

「あ、はい！」





院長先生の趣味の狩猟の話に上手く乗っかる北山さん。

院長先生が奥の部屋から鍵のついた大きな箱を持ってきた。

「これか猟銃だよ。ショットガンだからね、両方向に獲物が逃げても捕らえることができるんだ」

「へぇ〜、持ってみてもいいっすか」

北山さんの小さい身体に似つかわない重厚な武器。

「気にくわない奴がいたら一発でしとめてあげるよ」

「あなたったら…ごめんなさいね北山さん。相当酔っているんだわ」

「怖いっすね〜(笑)院長先生だけは怒らせないようにしますわ」




院長先生はすっかり酔っぱらってしまい、お食事会はお開きになった。

「明日が休みで良かったわね。でもこんなに楽しそうな主人を久々に見たわ。北山さん、ありがとう」

「いえ、じゃあ僕はそろそろ…」

「送りますよ」

帰ろうとする北山さんに、お酒を口にしていない太輔先生が声をかけた。

「いいですよ、歩いて帰るんで」

「Aを送るついでなので。駅までで良ければですが」

「あ〜、じゃあお言葉に甘えちゃおうかな」

「A、行こうか」

「は、はい。お願いします」

「北山さん、またいらしてね。Aさんも一緒に暮らせるのを楽しみにしてるわ」

「…はい」



太輔先生が運転する車の後部座席に私と北山さんが乗った。

「ほんとにご馳走さまでした」

車内で小さく流れる洋楽に不釣り合いな北山さんの明るい声。

だけど私は彼の空気感がどこか安心する。

「いえ。父がなかなか帰したがらなくてすみません」

「いやいや、すごく楽しかったですよ」

赤信号で車が停まり、北山さんはふと窓の方を見た。

「あ、あのラーメン屋、上手いって評判のとこだ」

「あんなに食べたのにまだ食欲あるんですか？」

「酒飲んだ後ってラーメン食いたくなるじゃん？」

「太りますよ〜」

「やばいな、モテなくなるわ」

「あはは」

ふと視線を感じてルームミラーを見ると、さっきの冷たい瞳をした太輔先生と目が合った。

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