偶然ですか？

引っ越し sideK2 ページ21

まだ何もない殺風景な部屋に足を踏み入れる。
備え付けの家電はすぐにでも使えそうではあるものの、積み重なっている段ボールを今日中に何とかしないと衣食住がままならない(笑)

まずは新品のベッドと勉強机の組み立て…かな？
どっから手つけたらいいのかわかんねえや。


なんだかんだ心の中で文句を言いながら、説明書を引っ張り出してさっそく組み立てに取り掛かる。
読んでは組み立て、読んでは組み立て…


試行錯誤しながらやっとベッドが完成したころには、もう午後三時を迎えようとしていた。
時間たつのはっや！！
…いや、俺が遅いのか…？

幸い次に手を付けた勉強机はかなり楽で、ものの５分ほどで完成した。


あらかじめ考えてきていた部屋の間取りを頭に思い浮かべ、大きい家具を配置していく。
ベッド、机、本棚…

ふう、と一息ついて座ったたところで、不意に携帯が鳴った。

誰だ？


見ると、通知欄には『風磨くん』の文字。
…え、風磨くん！！


風磨くんよお。
風磨くん引っ越しって今日だったよな。
風磨くんどう、進んでる?

あ、今日のこと覚えててくれたんだ…！

思わず頬が緩むのを自覚しながら、大急ぎで返事を打つ。


俺思ったより大変で…
俺今やっと家具の組み立てが終わったとこです!


そうだ、風磨くん近くに住んでるはずなんだよなあ。
メッセージをくれるってことは、今日はバイトないのかな？？

部屋を見渡して、大きくため息をつく。

はあ…ダメだ。
来てもらいたいなー、なんて思ったけど、とても人を招けるような状況じゃないことだけは確かだ(笑)。

スマホを置いて立ち上がろうとしたところに、再び通知音が聞こえた。


風磨くん一人でやってんの?

一人…だよね。どう見てもこれは。

俺一人です。

バイトないんですか、って聞いてみようかな？
今から大急ぎで整理したら、夜ご飯くらい一緒に食べに行けるかもしれない！


よし、と文字を打とうとしたところで、なんと風磨くんのほうから電話がかかってきた。
大慌てで通話ボタンをタップする。


「も、もしもし。」

「…手伝いに行くよ。お前んち、どこ？」

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