偶然ですか？

三度目の出会い sideK3 ページ13

「中島くんは、ここに来たことは？」
話が終わると店長と山下さんは仕事に戻り、菊池さんは振り向いて俺に尋ねた。

「面接のときに始めて来ました！」
「そっか。じゃあまずは、店の中を案内するね。」

軽やかに階段を上っていく菊池さんの背中を慌てて追いかけ、「よろしくお願いします！」と声をかける。

「だからぁ、そんなに畏まんなくっていいんだって(笑)」
笑って手を振りながら、そう言ってくれる。
確かに、昨日の方が距離が近かった気がする…
緊張してるんだなあ、俺。


それから30分かけ、菊池さんは3階まである店の中を、順番に説明しながら案内して回ってくれた。
トイレの場所、厨房の場所、器具の名称と道具の位置…。
覚えることが多すぎて、持参したメモ帳の半分が一瞬で消費された。

「そうだ、中島くんは、どこに住んでるの？」
1階に戻る階段を下りながら、菊池さんが口を開いた。
「昨日も会ったってことは、やっぱこの近く？」

菊池さんはこの近くなんだろうか。
逆に気になりながら答えを口にする。
「いえ、今住んでるのはここから2時間弱かかるとこなんです。」
「に、2時間！？」

菊池さんは思いっきり驚いた顔で振り向いた。
「そんな時間かけて通うの！？」
「あ、いえ、違います！！」
慌てて訂正する。
訝しげにこちらを見つめる菊池さんに、言葉を付け足して説明。

「俺、今年からこっちの大学に通うんです。だから、今度の土曜日にここの駅の近くの部屋に引っ越してくるんです！」
「へえ、なるほど。…ってことは、もしかして大学の最寄りもここ？」
「え？はい！」
俺が答えると、菊池さんはさらに驚いた顔で可笑しそうに笑った。

「まじで？じゃあ、大学も一緒だ！」


…え。ウソ、ホントに！？

何かわかんないけど、え、めっちゃ嬉しい！！

「すごいねえ、会ったばっかなのに、大学も職場も一緒なんてさ(笑)」
「本当ですね！こんなことってあるんだ〜…！」

感動しながらも、俺からも菊池さんに聞いてみる。
「菊池さんは、このあたりに住んでるんですか？」
そうだといいな、そしたら近所かもしれないな。

そんな淡い期待を抱いていると、嬉しい答えがそのまま帰ってきた。
「そうだよー。最寄りここ！」

やった！と心の中でガッツポーズ。
偶然が偶然を呼んで、こんな素敵な先輩とご近所さん…。


仲良くなれるといいなあ…！

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