君がいるから笑えるよ５ (ページ29)

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ピアノ４(智くん目線) ページ29

翔くんはAをぎゅっと抱きしめるその肩は少しだけ震えていて

本当に悔しかったんだなって今でも翔くんはあの日の自分を責めてるんだなって思った

そんな翔くんをAは不思議そうに見てる

S「俺マジで自分が情けなくてさ･･･後悔しかない･･･

　高校生達の色んな想いを聞いてさ？少しでも役に立ちたいって思ったんだよね

　それなのに役に立つどころか邪魔しちゃうなんて･･･ホントありえないよなぁ･･･」

そういう事か･･･だから翔くんは今でも練習してるんだ･･･

あの日の後悔を忘れないために同じ失敗を繰り返さない様に自分に言い聞かせて･･･

翔くんは本当に責任感の強い人だね自分自身をそんなに責めて･･･

S「って！俺は何を言ってるんだろうね！こんな事を急に言われても困っちゃうよね！

　何かごめんね！」

わざと明るく振る舞う翔くんそうやってまた自分の中に終いこんで

自分だけで苦しむんだ･･･

O「俺はね、翔くん･･･あの日すごい感動したよ？みんな泣いてたけどさ･･･

　あれは後悔の涙なんかじゃないよ？悔し涙じゃなかった･･･

　みんな泣いてたけどキラキラ笑ってたもんあの高校生達の涙が答えでしょ？」

あの高校生達はさ？あの歌を胸にさ、また前を向いて歩き出したんだよ？

ちゃんと前を向いて歩き出したの･･･

おいらがわざと「俺」って言ったの気付いたかな？ちゃんと伝わったかな？

俺の本心ちゃんと伝わってよ･･･

S「ありがと智くん」

翔くんはニッコリ笑うとAの指を掴んで鍵盤の上に置く

そして【チューリップ】をAの指で弾きはじめた

Aの小さな指で１音ずつゆっくりと･･･

S「さいた～さいた～チューリップのはなが～ Aこれ知ってる？」

ライブの時に聞くラップを歌う男らしい翔くんの声じゃなくて

柔らかくて穏やかな声心がきゅっと音を立てるような切ない声

おいらは急いで自分の部屋に戻ってスケッチブックを持って戻る

S「どうしたの？智くん」

O「ん～？ちょっと描きたくなったのそのまま弾いてて？こっち気にしなくていいよ？」

おいらがそう言うと翔くんは「ふふっ」って笑ってまたピアノを弾きはじめる

･･･今度は【かえるのうた】か(笑)

ピアノの音色と翔くんの声は本当に心地よくてペンがサラサラと進む

S「･･･としくーん！さとしくん！」