貴方が天下の大将軍になるまで、私は‥

38ー蒙恬sideー ページ44

楽華を率いて、山中で
盗まれた宝物を捜索していると


Aが目を覚ましたと報告があり


それを聞いて急いで城へ戻ってみれば






渡り廊下の角を曲がった所で、

……目を疑う光景がそこにあった





覗き見なんて趣味じゃないけれど




あの、堅物の王賁が…
女の子を抱きしめているなんて！



こんな貴重な場面に出くわすとは
思ってもおらず、

身を隠しながら成り行きを見守る事にした。







しばらく抱き寄せ、離した後に

相手の女の子が、Aだった事に驚いた。








Aと向き合ったまま

これまでに見た事のない表情をした王賁









王賁がAに好意を抱いているのは

前々から何となくだけれど、気が付いていた。








王家の嫡男であり
誇り高き玉鳳隊の隊長でもある王賁



同じ五千将として
行動を共にする事が多かった故に
彼の性格をよく理解しているつもりだ。







「Aへの気持ちに…

気が付いていないのは…
王賁自身の方だったりしてね。」




それとも立場が邪魔をして、
無意識に考え無いようにしているのか。






そんな事を考えていると


さらに目を疑う光景を目の当たりにする。






さすがに、これには驚きを隠せず

隠していたはずの俺の気配がゆらぎ

それに、いち早く気が付いたのは王賁だった。





俺の方を見て、かなり驚いた後すぐさま
鋭い殺気混じりの表情でその場を後にした。





やばいな…


かなり怒ってた。




後で顔を合わせた時が
修羅場になりそうなんて考えていたら




A「もしかして…夢かな？」



なんて、Aが言ってるものだから
思わず笑ってしまった。


あんなに分かりやすく好意を示されて
それに気がつかないなんて…笑


「いやA、夢じゃないでしょ…！」



A「もっ、蒙恬さま…っ！？

なっ、なっ、なんで…？
まさか今の見てたんですか？ 」



「ごめん、君が目を覚ましたって聞いて
急いで来たんだけど中々出て行く機会が…ね？」




A「…だからって覗き見なんて…！！
最低ですよ！！本当やだ最悪！！！」


「ぁはは、ごめんって本当悪かったよ。
でも…思ったより元気そうで安心した。」





A「……その節は
助けて頂いて、ありがとうございます。」



「うん、Aが捕らえられたって聞いて
俺ほんと生きた心地しなかった。

勝手に突っ走って、こんなに傷付いて
君の悪い癖だね。」

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