貴方が天下の大将軍になるまで、私は‥

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…


反物屋で、着物の生地を選んだお礼だと言って
蒙恬様が私の着物をひとつ選んでくださった。




「私の分はいいのに…」


「いーの！俺が買いたかったんだから。

そのかわり〜、着物が仕立て上がったら
それ着てまた俺と一緒に出かけること！」


いいね？と言いながら目配せをする。


「もう… 仕方ないですね」





反物屋を出た先で、そんなやり取りをしていると

後方から聞き慣れた声が聞こえてくる。


「兄上？」




声の主は、弟の蒙毅様だった。

可愛いらしい帽子が良く似合っていて
ニコニコと笑いながら駆け寄ってくる。



「おー！蒙毅、久しぶりだね！」

「兄上と、姉上も…お元気そうで何よりです！」




私が蒙豪様に拾われて
お二人の側に仕えてから、もう十数年になる。


本来ならば、当家の方と家人とは
きちんと一線を敷いて接するべきなのだけれど

蒙豪様の計らいと、お二人の人懐こい性格もあり
私を本当の家族のように扱って下さった。


だからこそ私は…
大好きな蒙家の方々を守りたい一心で医術を学び
救護兵として戦について行く道を選んだ。





「蒙毅様、姉上ではなく
Aと呼んで下さいませ。」


ただの側仕えである私を
姉上と慕って下さるのは嬉しいけれど、
名家であるからこそ、主従関係をきちんとしなければ。


「申し訳ありません、姉うえ‥あ、A…」



「え〜良いじゃん、別に。
実際姉ちゃんみたいなものなんだし」

蒙恬様が、Aは
やっぱり融通が利かないな〜なんてボヤいている。



「うるさいです、蒙恬様！

蒙毅様、他の方の前では
名前で呼び捨てて下さいね？」


「はい！ありがとうございます、姉上！」ニコッ


「俺と結婚すれば、本当の姉になれるよ？」

「その冗談は、もういいですって」


「あははっ！
相変わらず兄上と姉上は、仲睦まじいですね！」


「別に、睦まじくありませんっ！！」

「そんな全否定しなくても良くない？」



…




二人の若様と話をしながら
人混みを歩いていると



一人の男性から声をかけられた。


「これは、これは
蒙家の…蒙恬殿、蒙毅殿ではございませぬか？」



その身なりから、
一目で相当身分の高い御仁だと分かる。




毅「これは、李榻(りとう)殿。」



恬(李榻…？誰だっけ)コソッ

毅(お祖父様の、古いご友人の方ですよ。)

恬(あぁ、あの…)



コソコソと何かを話していた
蒙恬様の目付きが一瞬、鋭くなったように感じた。

4 ー蒙恬sideー→←2

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