【実況者】君の魔法で。【短編集】 (ページ1)

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キヨ＊泥棒と私1 ページ1

『もう！お父さんなんて大嫌い！』

夜になり、皆は家で、さぁ寝るぞという時間になる頃、
15歳の私は、家を飛び出た。

遡ること数分前。
「A、そろそろ寝るんだぞ」
『えーまだ寝なぁーい！』

最近巷で有名な、『呪文を楽しく覚えよう！』という中高生向けの本を買った私は、そこに書いてある呪文を言うのが楽しく、夜遅くまで起きていた。

「A、寝ないとお化けがお家に来るのよ？」
『お母さんったら、私はもう15だよ？
そんな子供騙し、効くわけないじゃない。』

母親の忠告を無視し、私は少し呆れた顔で言った。
すると急に父親が、私の読んでいた呪文の本を取り上げた。

『あーっ！お父さん何してんの！今私が読んでたのに！」
「こんなものの方が、よっぽど子供騙しだ！」
そう言うと、暖炉でぱちぱちと音を立てて燃えていた炎に本を投げ捨ててしまった。

「ちょっとあなた……。」
母親も流石にやりすぎでは、と父親に言った。
「こんなものを読んで、寝る時間が遅くなるAのせいだ。
しばらくお小遣いは抜きにするぞ。」

私は、その言葉にむっとした。
その瞬間、堪忍袋の緒が切れた。

『もう！お父さんなんて大嫌い！』

家を飛び出て、町に入るための門を見張っている兵を押しのけ、
明かりの少ない平原に出た。

『お父さんなんて大嫌いだ……。』
本を燃やすなんて酷すぎる。

それと同時に、私が今置かれている状況が分かった。
お化けがたくさんいる外に出ちゃった、どうしよう。
そう考えていると、後ろから何かのうめき声が聞こえた。

『な、なに？』
怖くて目を閉じたかったが、目を閉じるのが怖くなってきてしまった。
そして私の頬に冷や汗が一粒落ちたその時だった。

『あ…ぁ……！』

目の前に、不気味な赤色の獣がいた。
獣は、今にも私を襲いそうな目をしながら、瞬き一つせずこちらを見てくる。

『た……たすけ、いや……』
恐怖で体と声が出ない。
助けて。

そう叫ぼうとした時だった。

？「危ない！」
『えっ？』

突然男の人の声が聞こえた。
途端に、獣は真っ二つになり、蒸発して消えた。

『な、な、なにが……』

突然のことで何が起こったか分からない。
すると、今度は目の前に茶髪の男の人の整った顔が現れた。
『ひゃあ！？』
？「ぶっ…お前変な声出すなよ」

男は、まるで悪魔のような不思議な笑い方をした。
？「とにかく、ここは危ないから行くぞ」

気付いたときには、私の右手が男の大きな手に繋がれていた。