4話「天然たらし……?」 ページ4
佐野くんが転入してきて二日目。
呼び出されていたのを忘れて、新木先生に怒られてしまった。
そして、今は約束通り職員室に来ている。
「失礼します。一年の藤川明ですが、新木先生はいらっしゃいますか」
「おっ、やっと来たか! こっちだ藤川」
「手伝いって何すれば……って、何ですかこのプリントの山」
先生のデスクに向かえば、そこには大量のプリントがあった。
何枚あるんだろう……? 1枚ずつ丁寧に数えていたら下校時刻をすぎそうだな。
「手伝いっていうのはな、このプリント3枚ずつをホチキスでまとめて欲しいんだ」
「え……めんどくさいです」
「お前が授業で寝て、しかも忘れてたのが悪いんだろ? 終わったら教卓に置いててくれればいいから」
「分かりましたよ」
プリントを貰い、新木先生に扉を閉めてもらって職員室を出た。
一クラス約30人だが、それなりの量がある。重い。
職員室は二階にあるため、階段を降りなければならなかった。
「あー、面倒臭い……。なんで寝ちゃった上に忘れちゃうかなぁ、私」
愚痴を零しながら階段を降りる。
すると、ズルリと足が滑って身体が浮遊する違和感を感じた。
手すりがある方の近く歩いていないため、捕まる場所もない。
やばい、もう駄目だ。
ぎゅっと目を瞑り、次にくる衝撃に身構えた。
「……え?」
浮遊感が消えたのに、衝撃が来ない。
その代わり、ほんのりと暖かさを感じる。
「あっぶな……ギリギリセーフ」
「えっ、佐野くん?」
「怪我ないか?」
「あっ、うん。ありがとう」
彼は、私を支えて立たせてくれた。
「階段登ろうと来たら、落ちてきたからびっくりした」
「ほんとにごめんね! 助けてくれてありがとう」
「いや、大丈夫。本当に怪我してなさそうだし安心したわ」
そう言った彼は、優しい緑を纏っていた。
佐野くんは嘘がつけないのかな。
「次から気をつけろよ」
「うんっ。……っ!?」
……通り際に、頭を触られた。
「え? て、天然たらし……?」
でも、あんな無愛想に人の頭を触ったりするかな……。
私の疑問は、誰にも聞かれること無く空中へ溶け込んだ。
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作者名:朱音 | 作成日時:2017年1月24日 12時