1話「色が薄い転入生」 ページ1
今日の空は少し曇っていた。だからかな、いつもより肌寒く感じる。
去年の今頃は、受験勉強してたなぁ。
そんなことを考えながら、窓際にある自分の席で本を読む。それが、私の朝の日課だ。
だが、いつもよりも集中出来なかった。
それは、いつも騒がしい教室が今日はもっと騒がしいから。
一体、何があったんだろ。
少しずれた眼鏡をクイッとあげた。
「おはよう、明!」
「おはよ、春香」
本に目を戻そうとすると、カタンと椅子を引いて座った彼女がニコリと微笑んだ。それにいつもと同じように笑って返す。
彼女の名前は早乙女春香。私の中学からの友達。
高校に入ってから薄くメイクをするようになったからだろう、童顔な彼女の顔は以前より大人びたように見える。
両側の髪を後ろで一つにし、後ろの髪を下ろす。いつもしている彼女の髪型。
そんな彼女の髪がいつもより勢いよく揺れて、顔をこちらに向けた。
「ねぇ、知ってる!? 今日転入生が来るんだって!」
「そうなの? 珍しいね、こんな時期に」
ちょうど、ハロウィンという街が浮かれる行事が終わったばかり。そんな時期に来るなんて、なにか事情があったんだな。
「かなりイケメンらしいよ〜? ゲットしてやる……!」
「あはは、頑張って」
うん! と大きく頷いて気合を入れている彼女は、周りが綺麗な橙に光っていた。彼女はコロコロと色が変わるから見ていて飽きない。
何もせず、ただただ降ろしている自分の黒い髪を耳にかけた。
「……ほんと、素直だな」
ポツリと呟く。
「明? なんか言った?」
「ううん、何でもない」
「ほんと? それでさ〜」
春香が話そうとすると、ガラリと教室の扉が開いて先生が入ってきた。
私達は、話すのをやめて前を向いた。
「突然だが、今日は転入生が来ている。入って来い」
ガラリと扉が開いた瞬間、女子の黄色い声が耳に響いた。それと同時に自己主張激しい黄色が溢れて目が眩む。
「……ほんとだ」
入ってきたのは、春香が言った通りかっこいい男子だった。綺麗な肌に、どこかの少女漫画のヒーローの様なスタイルと顔立ち。
眉目秀麗とは、まさに彼を表している。
だが、私にはそれ以上に驚くことがあった。
「佐野優斗です。よろしくお願い致します」
その驚くことは、彼から色が見にくいという事だ。
色が薄い。薄くて暗い青が、彼を纏っていた。
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作者名:朱音 | 作成日時:2017年1月24日 12時