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時計の短針は何周も何周も回り、その「明日」はすぐに巡ってきた。
「吉田先輩。モーニングコールです」
吉田「え、久しぶりやが」
「久々にお電話させていただきました。また後でお会いしましょう」
吉田「ん…?また後で?」
恐らく飛行機の中だと思われる先輩に意味深な電話をかけると、私は朝早くからバンテリンドームへ向かった。
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まだ誰もいないドームの静けさは実に寂しかった。
けれども、ある1音がその空気を一変させた。
鳴り響く、軽やかな、でも重い金属バット音。
「大谷、選手…?」
大谷「…あ。一平さんの、」
なぜこんなにも早朝にドームにいるのか。なぜそんなに活躍しているのか。
なぜアイコンがクレープを持つ男性なのか、そもそもあの男性は誰なのか。
聞いてみたいことは山ほどあったのに、なぜ私はこの質問をしたのだろう。
「あの。なんで金属バットなんですか?」
それは側から見れば、挨拶も忘れるただの変質者だった。
「申し遅れましたが、私今大会の通訳の…」
大谷「一ノ瀬さんですよね。一ノ瀬Aさん」
あの世界のMVPの、世界の旦那の、そして私の初恋の大谷翔平が、今私の名を呼んだ。
それだけで顔が綻びそうだった。
大谷「一平さんからお写真いただきました」
しかしその一言で私の高揚していた気分は急降下した。
お写真、というのはあの某寝顔の流出画像だろう。
あれで認知されているのは果たして吉と出るのか、それとも凶と出るのかはわからない。
ただ、まずは認知していただけていることが奇跡だと思う。
そう思えば、あの事件の首謀者らを許せるような気もした。
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まる(プロフ) - みゆじろうさん» 今年度から大学生になり、慣れない日々が続く中で更新頻度が激減しておりますが、必ず完結させますので寛大な心でお待ちいただけると助かります。今後もよろしくお願いします! (2023年4月15日 23時) (レス) id: 01772b3048 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - みゆじろうさん» みゆじろう様、コメントありがとうございます!できる限りリアルを追求して執筆してきたので、そのようなお言葉をいただけて幸いです。たくさんの素晴らしいWBC作品の中で1番と評価していただいたことも本当に嬉しいです! (2023年4月15日 23時) (レス) id: 01772b3048 (このIDを非表示/違反報告)
みゆじろう(プロフ) - あると思います。それに対しての訂正のコメントもあると思います。リアルさを求めれば求めるほど大変だとは思いますが、楽しませて読ませていただいている読者として執筆を応援しています。WBCを題材にしている小説の中で1番私は好きです。更新楽しみにしています! (2023年4月13日 2時) (レス) id: 7e0dd8129d (このIDを非表示/違反報告)
みゆじろう(プロフ) - はじめまして。楽しく小説読ませていただいております。選手の経歴や言葉、試合内容など知識がないと書けない小説だと感じています。その分、読者として妄想を広げつつ感情移入ができ、とても面白さを感じています。リアルな部分を表現する際に、ミス生まれる事も→ (2023年4月13日 2時) (レス) @page17 id: 7e0dd8129d (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - まいか様、コメントありがとうございます!声出しが上手く聞き取れなかったので教えていただき嬉しいです。直ちに修正させていただきます。温かいご指摘感謝申し上げます。今後もよろしくお願いいたします。 (2023年4月13日 1時) (レス) id: 01772b3048 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まる | 作成日時:2023年3月25日 10時