たった一度の恋。2 (ページ12)

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メニュー表を受け取った瞬間、

さっきの店員さんが颯爽と注文を受けに来た。

「何飲む？」

「んー‥とりあえず、生で」

「じゃあ俺もビールにしようかな」

「廉くんはシャンディガフにしたら？」

「美味しい？」

「うん、それなら廉くんも飲めると思うよ」

注文が終わると前にいる3人と目が合って

なんやねん。って聞いたらなんも～。なんて

にやにやと3人共同じような顔して返された。

それからきたお酒で乾杯して

本当他愛もない会話が続いたジンの誕生日会は

盛り上がり、気づけば2時間もの時間が経過していた。

「いや～まじでAさんって大人っすね」

「年齢だけよ、大人なのは。それとも岸くんは私のことおばさんって言いたいのかな？」

「いやいやいや！さっせんさっせん、そんなつもりは全然！Aさんは美人なお姉さんって思ってます！」

「あ、岸くん。廉の彼女口説いてるじゃん」

「おい、紫耀！巫山戯んな！」

「優太には取られん自信があるから大丈夫やで」

「なんでだよ！それはそれでだろ！」

俺らの会話に笑うAさんが可愛くて

少し見とれていると、ジョッキに口を付けた

彼女はその視線に気づいて目を細めて笑った。

‥‥可愛い、抱き締めたい。それが無理なら

手だけでも繋ぎたい。のにみんなとの会話に夢中な

彼女にはそんな願いは一切届かなかった。

「じゃあ帰りますか！」

優太のこの一言でお開きになって

店から出ると肌寒い風が俺達を向かい入れた。

体を小さく震えさせたAさんの肩に

薄手のコートを掛けると

ありがとう、と柔らかい笑顔が返ってきて

体より心が温かくなる。