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「伊野尾くーん、懐かしいね」
「そうだね。前もこんな感じで歩いたよね」
「すっげえ楽しかったね。いや、今もめっちゃ楽しいけどね」
「吐きそうになるまで飲まなくなっただけ、大人になったよな、俺ら」
「マジでそれ」
どうだろう。
千鳥足で歩いているんだから、きっとそんなに成長してない。
でもそれが俺達らしい気がして、悪くないと思った。
大きな交差点に差し掛かる。
いつか�睫擇�満月と間違えた黄色い信号。
楽しかったな。
いや、�睫擇斑舂匹�なってから、こうして二人でいる時間は俺にとってはずっと楽しい。
時間が止まれば良いのに。
だって今だけは、俺の�睫擇犬磴鵝�
「やっぱ伊野尾くんと居ると楽しいわ。最高だね」
「……そう？」
「最初はぜんっぜん合わねーと思ってたけど、実際はめちゃめちゃ気も合うし、こうやって仲良くなれてホント良かった」
素直に嬉しい。
俺といて、そう思ってくれるなら。
『最高だね』が単にノリで出た言葉でも。
この瞬間だけは、俺が�睫擇里い舛个鵑世辰道�でしょ？
「あれ、覚えてる？あの信号」
俺は交差点の信号機を指差した。
信号機はちょうど青から黄色に変わったところだ。
「何だっけ？」
「�睫擇�満月と間違えた信号」
「あー、ちょっと、恥ずかし。そんなん覚えてんなよ」
「いや、あれは忘れられない。芸術的な勘違いだった」
「勘違いに芸術的とかねえから」
恥ずかしそうに、でも無邪気に笑うその顔に。
不意に気持ちが溢れそうになった。
酒気に浮かされて。
�睫擇陵イ靴気某譴錣気譴董�
ちょっとだけ。
気持ちが零れてしまった。
「月が綺麗だね、�睫據�
『見て、伊野尾くん。月がめっちゃキレイ』。
そう酔っ払って言った、あの時の事をからかうように。
らしくない、俺にはロマンチック過ぎる昔の文豪の残した言葉。
『私はあなたを愛しています』
�睫擇呂�っとそんなの知らないだろうから。
小心者の俺が出来る、精一杯のコクハク。
「もう、伊野尾くんやめてよ。恥ずかしいじゃん」
�睫擇楼討猟蝓⊃�年前の事をからかわれたと思っている。
それでもいい。
「綺麗だよ。月がすごく」
どうせ叶わない気持ちだから。
少しだけ切なくなって、声が震えた。
上手く笑って言えただろうか。
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作者名：たろう | 作成日時：2023年11月29日 21時
