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自分で『大丈夫』と言って舞台にあがったあの人は、寸前に倒れたとは思えないほどいつも通りだった。
終演して袖に捌けて、楽屋に戻るまで。
いつも通りの笑顔を絶やさなかった。
知念や裕翔とじゃれながら楽屋に戻ると、あの人の楽屋の方から何やら大きな声が聞こえてきた。
「今日ぐらい家に帰れよ」
薮ちゃんが何か言っている。
多分、少し怒っている。
年上組が言い争う事なんて滅多にないから、俺たちは恐る恐る顔を覗かせた。
「うん。でも、あっちも大詰めだから。俺の卒論なのに周りにばっかり手伝わせてるし」
あの人の声だ。
「ホントは一日入院しろって言われたんだろ。マネージャーに釘刺しとけって言われてんだよ、こっちは」
入院？
そんなに体調悪かったのか。
「明日休演日だから、目処がついたらちゃんと休む。みんなにも、もう迷惑かけないから」
そうしてあの人は慌ただしく楽屋を出ていった。
「ったく、ききゃしねえよ」
薮ちゃんは深いため息をついた。
「薮くん、いのちゃんどうしたの？」
裕翔が恐る恐る尋ねる。
「ああ、お前ら居たのかよ。伊野尾、ここ最近家に帰れてないんだよ」
「え、何で？」
「大学の卒論が大詰めなんだってさ。ここんとこ毎日、舞台終ったら大学の研究室帰って、卒論書いて、仕事の時間になったら大学から現場に来てんだよ」
「ひぇ……、なにその拷問みたいな生活」
「あんな体調なのに、また大学戻ったの？」
裕翔と知念が眉をひそめた。
「留年だけは死んでもしないって。ただでさえ大学通ってグループに迷惑かけてるって、すげぇ負い目に感じてんだよ、あいつ」
「伊野尾くん、今まで楽屋で大学の課題なんてしたこと無かったのに、この舞台の間ずっと勉強してるからね。よっぽど大変なんじゃない？」
薮ちゃんの言葉に続けるように、雄也があの人の出ていった扉を見つめて言った。
暫くみんな、楽屋の扉を見つめて無言だった。
そのうち、薮ちゃんがぽつんと言った。
「頑固者め」
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たろう(プロフ) - 雪音さん» なんて嬉しいコメント！ありがとうございます。なかなか思ったように書けないなりにも、読んで頂いて感想まで頂いてホントに嬉しいです。気まぐれ更新ですが、またお目通し頂ければ嬉しいです。 (1月25日 22時) (
レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
雪音(プロフ) - 最後の2人が仲直りするシーンで感動して泣きそうになりました。たろうさんの書くお話いつも楽しみにしてます！ (1月25日 20時) (レス) id: 287eadd06c (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» ありがとうございます。これからもサツキさんに読んでいただけるように、頑張って更新したいと思います。 (1月24日 23時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
サツキ(プロフ) - 返信ありがとうございます！ヤバいです！たろうさんに読んでいただけていたとは…。なんか、ものすごく気恥ずかしいです💦たろうさんの紡ぐ綺麗な文が大好きです。お忙しい中とは思いますが、いろいろお話を楽しみにしています。 (1月24日 21時) (レス) id: 35bce03242 (このIDを非表示/違反報告)
たろう(プロフ) - サツキさん» コメントありがとうございます！なんて嬉しくて勿体無いお言葉を……（涙）。私もサツキさんの小説を楽しみに読んでいた読者なので、サツキさんからコメント頂けて嬉しいです。ホントにタダの自己満足の文章を読んで頂けて、嬉しい限りです。 (1月24日 21時) (レス) id: ad9f11bcb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たろう | 作成日時：2023年12月15日 18時
